豆はおいしい

 肉食を減らすには、どうすればいいか。
 肉食は健康に悪いし、地球環境にとってさらに悪い。減らしたほうがいいけれど、ただやめろといっても無理です。もっと別の「新しい味」を覚えてもらうのがいいと、フードライターがいっている。なるほど、そういう手もあるかもしれません(How to Make a Nation of Meat Eaters Crave the Humble Bean. By Bee Wilson. Aug. 12, 2024. The New York Times)。

ヒヨコ豆

 牛肉は地球環境を破壊し、温暖化を進める元凶のひとつです。地球上の食肉生産で排出される温暖化ガスは、すべての交通機関が排出する温暖化ガスに匹敵するともいわれる。ぼくらが牛肉を食べないようになれば、サステナブルな生き方にもなります。
 かといって、ハンバーガーを食べるなといっても聞く人はいないでしょう。
 バーベキュー禁止なんていったら、アメリカでは暴動が起きる。

 フードライターのビー・ウィルソンさんは、肉以外のいろいろな味を覚えて楽しんでもらうのがいいといいます。そうすれば、牛肉だけがごちそうじゃないと思えるようになる。
(で、牛肉の消費をいまより減らせる)
 おいしいものはほかにもある。たとえば、豆。
(豆! フェイクミートや培養肉じゃなくて?)
 豆をこよなく好きになれたら、世界は変る。それは天啓に打たれたような経験にもなる。

フェジョアーダ(ブラジルの豆と肉の煮込み)
(Credit: João Guilherme de Carvalho, Openverse)

 と、ここまでくると、ウィルソンさんのいってることはちょっと無理っぽいと思う。
 でもさらに読んだら、一理あると思いました。

 かつてアメリカの食卓には、アボカドを乗せたトーストやケールのサラダなんてなかった。いまは誰もがそういう“新食品”を当たり前に食べ、楽しんでいる。人の味覚、好みは変わるから、もっと新しい味にも適応するだろう。
 豆だって、おいしい、好きだと思えるようになる。
 ウィルソンさんは、“天啓をもたらす”世界のさまざまな豆料理をあげています。

シャワルマ
(Credit: cyclonebill, Openverse)

 シャワルマ(豆を入れたトルコ風巻物)、ビーンリカ―(豆の酒。ことにパルメザンチーズや味噌で味付けしたもの)、ターメリック風味のシェリングビーン(虎豆に似た豆)のシチュー、地中海のフムス(ヒヨコ豆とオリーブ油)、ブラジルのフェジョアーダ(肉と黒豆の煮込み)、南カロライナのホッピン・ジョン(豆と米、ベーコンなどの煮物)などなど。

 肉をやめろというのではない。この世界には、まだぼくらが知らない、肉よりずっとすばらしい味があるということ。そのゆたかさを知り肉離れを進めようという、ちょっとつつましい主張にとりあえず共鳴します。
(2024年8月16日)