しっかりした支援は、しない。できない。
しっかりしていない支援なら、できる。みんなですれば、なんとかなる。
浦河は、以前からそうだったけれど、この傾向がさらに定着しています。
そのひとつが、「浦河の子育てを考える会」でしょう。
精神障害者の子育てを応援するしくみとしてはじまったこの会は、いまでは精神障害者だけでなく、地域の「困っている家族」と広くかかわっています。浦河ひがし町診療所のスタッフを中心に、多くの福祉・医療、行政関係者やボランティアが参加するようになりました。
この会の、3か月に1度の全体会議が6月13日にありました。

地域の困っている家族といっても、ほとんどが母親と子どもです。考える会は、そういう親子のために「みんなの家」を開いてきました。そこで話しあい、食事をし、ゆっくりと親子が安心と応援をもらう。
そういう子育て支援の活動が、みんなの家の外にも広がっています。
今回とくに印象的だったのが、「おばちゃんたちの登校支援」でした。
子育てに苦労しているひとりの母親と、小学生の息子、Kくんの話です。Kくんが不登校になり、母親は行き詰まってしまった。これをどうするか。
ボランティアのおばさん5人が、じゃあ、と手をあげました。あたしたちのうちのひとりが、毎朝Kくんに付きそって学校に行く。月曜から金曜まで。
年配のにこにこしたおばさんが、さ、いこか、と車で現れる。ひとりひとり肌合いがちがう。声のかけ方もちがう。とっかえひっかえ現れるおばさんに、Kくんはつられて学校に行くようになりました。

Kくんの母親は、5人も来てもらうのは悪いと思ったようです。でもひとりあたり週に1回ならいいかとも。おばちゃんたちの方は、ただ送るだけ。送った先で、Kくんが学校のなかに入らなくてもいい。しっかりしていないおばちゃんたちに、Kくんも安心しました。いいかげんだからできた、楽しくやれたと、おばちゃんたちはふりかえります。
3か月後、Kくんは自転車に乗り、ひとりで学校に行くようになりました。
全体会で報告する5人は、失敗も多かったけど、そういうあたしたちをKくんもよく見てたんだよねと、終始笑いの渦に包まれていました。
北海道の過疎の町で起きた笑いの渦です。
しっかりしていない人が、しっかりしていない支援をする。どっちが支援してるのかされているのか、そもそも支援といえるかどうかもわからない。寄せては返す波のような、終わりのない支援がつづいています。
(2025年6月18日)