まだ半分ある

 ボトルにウィスキーが半分、残っている。
「もう半分しかない」のか、「まだ半分残っている」のか。
 ものごとを悲観的に見るか、楽観して見るか。おなじことがドイツの選挙についてもいえる。極右が躍進したといっても、ドイツがだめになったわけではない(Germany has swung to the right. What does that mean for the country – and Europe? Our panel responds. 24 Feb 2025. The Guardian)。

ドイツ連邦議会

 ドイツの選挙について、朝日新聞の見出しは「独・右翼、第2党に躍進」でした。
 極右政党のAfDが20%の得票で、29%の中道右派、キリスト教民主・社会同盟につぐ第2党にのしあがったことをさしています。
 得票倍増で第2党とは、すごい。
 世界的な波に乗ってドイツも右旋回かと思ったら、ガーディアン紙には別の見出しもありました。
「80%は自由な民主主義に投票した」
 極右に流れた票は、わずか20%にすぎない。

 同紙のコラムニストで、ジョージア大学のキャス・ムッディ教授が書いています。極右に詳しい政治学者の教授はこう指摘する。
「選挙結果はたしかに右傾化を示している。が、移民問題でスウェーデンやオランダの保守政党が伸びたのにくらべれば、AfDの伸びはそれほどでもなかった」
 AfDは最近行われた地方選挙ほどの勢いも、今回は見られない。

 ナチスを思わせる国粋主義のAfDは、移民排斥を訴えて伸びました。けれど移民はドイツ有権者が関心をよせる3番目のテーマにすぎない。第1はなんといっても経済です。停滞するドイツ経済をどう立て直すか。そのために第1党となった中道右派、キリスト教社会・民主同盟のフリードリッヒ・メルツ党首は幅広い連立政権を組まなければならない。
 ドイツ有権者の80%は民主主義を支持している。その80%のための政治に専念しなさい、とムッディ教授はいっている。

 そういうふうにいわれると、なんだか安心します。
 アメリカのバンス副大統領は、欧州安全保障会議でヨーロッパ各国首脳に極右政党も受けいれなさいと「説教」したけれど、そんな扇動に乗るほどドイツ国民は幼稚ではない。少なくとも80%の国民は。
 いやしかし。残り20%が極右支持っていうのは、やはり重い。
 どう見るか視点は揺れるけれど、とりあえずは80%を信じましょう。
(2025年2月26日)