ここに住みたいならイヌ、ネコ禁止。
そんな共同体がオーストラリアにあります。イヌ・ネコがきらいだからではない、自然保護のためです。
ペットじゃなく、カンガルーやコアラなどの自然動物とともに暮らす。なんてかっこいい共同体だろうか(‘We miss having a dog but it’s the price you pay’: the village that banned pets to save wildlife. 4 Dec 2025. The Guardian)。
オーストラリア東海岸、ゴールドコーストの近くのカランビン・エコビレッジ(Currumbin Ecovillage)です。
持続可能な暮らしをしたいというエコな人たちが、20年前に110ヘクタールの敷地ではじめました。ここに建てる家は大きさや形に制限があり、一定の率の「再生建材」を使わなければならない。エネルギーも自給、太陽光発電や雨水の貯留タンクが義務づけられます。

(同ビレッジのウェブサイトから)
老人や退職者もいるけれど、若者もいる。映画のスタントマンやジャーナリスト、金持ち、仏教の僧侶、作曲家、世捨て人のような人もいる。いろんな人がいるからは村は村になる。だれが来てもいいが、イヌ、ネコは自然界の動物の天敵になるから禁止です。一時的な訪問もだめ、介助犬だけが例外です。
住民のひとり、ビル・スマートさん77歳はいいます。
「犬のいる暮らしがなつかしいけれど、ここじゃあきらめなきゃいけない」
もともとは牧場だった村は、荒れ地になっていたところに植林したので緑がもどってきた。カンガルーやワラビー、コアラ、ハリモグラ、カモノハシ。ペット以外のあらゆる動物がいます。住民のなかには豚やヤギ、鶏を飼っているものもいる。
みんながみんなを知っていて、それぞれが持てる力を出し合う。スマートさんは共同農地で農作物を作り、収穫はホームレス支援などに寄付しています。
子どもが生まれるとみんなが集まり、2週間、その家の食事を作る。そういう支え合い、交流があるから、ここに住んでいいと思うようになる。

(Credit: Tezza #, Openverse)
カランビン・エコビレッジのような村は、インテンショナル・コミュニティ(目的共同体、intentional community)と呼ばれる。
一定の目的のために人が集まった地域社会で、宗教コミュニティが代表的です。近年は自然保護、持続可能性をかかげたコミュニティが出現しており、カランビンは「イヌ・ネコ禁止」で有名になったけれど、本来の目的は持続可能性です。
生きたい暮らしを実現するために、生きたいと思う村を作る。ぼくにはとても魅力的な生き方に思えます。
(2025年12月10日)
