セルビアの朗報

 セルビアが湧いています。
 全体主義が優勢の21世紀に、セルビアで行われた選挙で全体主義的な政権が敗退しました。久しぶりの朗報です(Serbian leader Aleksandar Vučić ousted by student movement in seismic election. 25 Oct 2026. The Guardian)。

 25日に行われた総選挙で、セルビアの政権党「セルビア進歩党」は250議席中104議席程度にとどまり、新勢力「学生リスト」は135以上の議席獲得が確実となりました。
 14年にわたって政権の座にあったブチッチ前大統領は、「われわれが選挙に負けたことは明白だ」とのべています。
 野党勢力「学生リスト」のリーダーのひとり、ベオグラード大学のサイジッチ教授は、「民の声は聞かれた。今夜われわれは勝利を祝い、あすからは未来をつくる」とのべました。

セルビアの首都ベオグラード

 多くの市民が首都ベオグラードの街頭にくり出し、「勝った、勝った」と興奮し踊っています。警備にあたる機動隊に抱きつく人もいる。43歳の女性はいいました。
「まるで大晦日の夜が3年分、いっしょに来たみたい。これで私たちはようやく息ができるようになった」
 強権政治の、あの息苦しさがなくなる。4月のハンガリーにつづき、ヨーロッパの全体主義的な政権がふたたび敗退したのです。

 ぼくがこのニュースにとくに引かれたのは、学生が中心だったことでした。
 セルビアには1990年代以来、長い学生運動の伝統があります。今回も学生たちは、2年前に起きた事故をきっかけに政府の腐敗追及に立ちあがりました。「セルビアかマフィアか」とスローガンを掲げ、汚職が横行するマフィア国家になってはならないと呼びかけました。数万人規模のデモや集会がくり返された。

1990年代のセルビア反政府抗議行動
(非営利団体「CNCR」ウェブサイトより)

 運動の白眉ともいえるのが、「学生リスト」です。
 総選挙に際し、議会の議席分の人数、250人の候補者全員を学生たちが選びました。ほとんどが政治経験のないしろうとです。学者やスポーツマン、企業家や農民など、多彩な分野の候補者がならんでいる。学生の人気投票ではなく、専門家グループと何度も協議を重ねた末の候補者です。
「学生リスト」とよばれる政治運動は広範な支持を集めました。民主主義のお手本のようなやり方で、学生は市民とともに政権を変えています。

 セルビアという、遠い、なじみのない国で、なにかすばらしいことが起きたらしい。
 そう思えるだけで、いくらか救われる気がします。
(2026年10月26日)