ティファールが叫んでいます。フライパンを禁止するなと。
フライパンといっても、いわゆるテフロン加工の“焦げつかない”フライパンです。これがフランスで禁止されそうになった。抗議でとりあえず撤回されたけれど、テフロンのフライパンはいずれ使えなくなるかもしれない。
ティファールはぼくも愛用しています。「テフロンは危険」という認識がだんだん強くなってきました(‘Don’t Touch My Pan!’ France Bans Toxic PFAS, Except in Cookware. Feb. 28, 2025. The New York Times)。

テフロン加工というのは、誤解を招く言い方です。
正確には有機フッ素化合物で、問題になっているのはそのなかでも「永遠の化学物質」といわれるPFASです。かつて無害とされていたのが、健康や環境に深刻な被害を与えることがわかってきました。肝臓や免疫系を障害し、先天異常やがんを引き起こす。
フランスの緑の党が去年、規制法案を提出しました。
PFASの製造、販売だけでなく、衣類や化粧品、工業製品への使用を広い範囲で禁止する法案です。
これに対し、ティファール社が労使一丸となって反対運動を展開しました。
フライパンを守れ、雇用を、消費者を守れ。
国会前でのフライパンをたたきながらの抗議が功を奏したのか、台所用品は法案から除外されることになりました。
多くの消費者は、PFASが危険といっても“焦げつかないフライパン”の魅力には逆らえない。規制法は修正の上、来年から施行されることになりました。

専門家のなかには、フライパンは大きな問題ではないという人もいます。PFASはフライパン以外に、衣類や化粧品、靴、スポーツ用品や工業製品に広く使われているので、全体からみればごく一部です。全体を規制しなければならないということで、いまは衣類の規制も一部だけれど、2030年には全面的に禁止される。消防士の装備以外は。
PFAS規制をまっさきに進めたのはデンマークでした。けれどデンマークの規制が部分的なのにくらべ、フランスの規制はより包括的とされる。環境活動家は、フライパンなどが除外されたのは残念だが、フランスの規制は世界をリードできると評価しています。
いずれ焦げないフライパンは使えなくなる。
というか、フライパンの使い方が変わるのでしょうね。
この事態、中国人が笑っているかもしれません。炒め物は油をなじませた中華鍋でするもの。焦げない鍋なんかで料理はできないと。
(2025年3月5日)