ディスレクシア

 ディスレクシアは読字障害ともいわれる。
 文字を読むのが苦手な人たちのことで、学習障害の一種とされます。それ以外の知能は発達しているので、社会人になればちゃんとうまくやっている人が多い。
 そのディスレクシアを、トランプ大統領がばかにしました。ディスレクシアの当事者が反発しています(Dyslexics Are Too Smart for Trump. By Molly Jong-Fast. March 23, 2026. The New York Times)。

 話は、トランプ大統領がカリフォルニア州のギャビン・ニューサム州知事をけなしたことからはじまりました。ニューサム知事はディスレクシアで、トランプ氏の政敵でもある。そのニューサム知事についてトランプ氏はいいました。
「IQが低いんだ、あいつは。自分でもいってる、学習障害があるって。そんなやつが大統領になれるわけがない」

 ディスレクシアの当事者で、作家のモリー・ジョンファストさんはいいます。
「トランプ氏のあざけりはいつものことだ。彼は公然と女性をブタだのアホ、グズという。黒人をサルとみなし、障害者をあざ笑う。取材に来た関節拘縮症の新聞記者(のぎこちない動作)を真似してばかにしたことは、みんなが覚えている」
 ここでトランプ批判よりぼくの目を捉えたのは、ジョンファストさんがどうやってディスレクシアを乗り越えたかでした。

 ディスレクシアの本質は、「文字と発音と結びつかない」ことです。文字は見えている。ただそれを頭のなかで「音」に変えることができない。
 彼らはそれぞれにこの問題への対処法をみつけます。
 よくある対処法は、文字、それも単語を、「形で覚えてしまう」ことらしい。「BOY」という単語を見たら、スペルを追って発音することはできなくても、3文字の「形」から「ボーイ」の意味をとらえる。そういう、特別な脳の使い方をしています。
 ニューサム知事も、トム・クルーズやスティーブン・スピルバーグなどの有名人も、それぞれのくふうでディスレクシアを克服していった。

 この話にぼくがことさら興味をおぼえるのは、「形で覚える」という文字の捉え方が、ろう者の言語処理と共通する部分があるからです。
 ろう者は手話を使うけれど、手話には文字がない。文字というものになじみのない彼らは、第二言語の日本語や英語の習得で「文字の壁」にぶつかります。彼らは、もしかしたらディスレクシアの人たちの苦労に学べるところがあるかもしれない。
 ディスレクシアとろう文化、そのつながりをだれか掘りさげてはくれないでしょうか。
(2026年4月1日)