イラン戦争は、ハルク島を占領すればすぐ終わる。
こんな主張が、ネットのニュースサイトやスポーツ紙をにぎわせています。
ハルク島はイラン北西部、ペルシャ湾の島で、世界最大級の石油積み出し港がある。ここを占領すればイラン経済は破綻し政権も崩壊する。ニューヨーク・タイムズの保守派コラムニスト、ブレット・スティーブンスさんまでがそんな主張を掲げました。
ほんとかなと、目をイギリスのガーディアン紙に転じてみました。やっぱりちがうんじゃないか(Why Iran’s vital Kharg Island oil hub is still untouched by US-Israel bombers. By Dan Sabbagh. 11 Mar 2026. The Guardian)。

(Credit: Reza Hatami, Openverse)
経済制裁を受けているイランがこれまで生きのびたのは、石油があるからです。石油は政権の基盤であり、革命防衛隊の給料もこれで支払える。大量のミサイルやドローンも、中東各地に展開するイラン系軍事組織もすべて石油で維持されている。
その石油の90%がハルク島から輸出されます。ここを破壊するか占領すれば、イランの体制は崩壊するというのがハルク島占領論です。
無理でしょ、そんなことしたら世界経済が崩壊すると、ガーディアンの安全保障担当、ダン・サバー記者は書いている。
イギリスのシンクタンク、「チャタムハウス」のニール・キリアム氏がいったそうです。
「もしハルク島が攻撃されれば、3月9日に1バレル120ドルになった原油価格はたちまち150ドルになるだろう。あれは世界エネルギー市場の生命線だ」
だからアメリカもイスラエルも、今回はハルク島に手をつけていない。

ハルク島の占領は、軍事的に困難ではない。けれど少人数の特殊部隊ではなく、地上軍の大部隊が必要で、人的、経済的負担は大きい。いったん占領すればイラン本土から石油が来なくなり、世界の石油市場は逼迫する。イランの支配体制は崩壊するが、同時に世界の経済も、崩壊とはいわないまでも長期にわたり低迷する。
そんな状況にトランプ政権が耐えられるはずがない。
いまアメリカ軍のなかに、大規模な地上部隊動員の動きはありません。
ハルク島占領はないでしょう。ネットニュースはおもしろいけれど、これもまた空理空論にみえる。
対イラン戦争は短期間では決着がつかない。イランの支配体制転換をめざすなら、年単位の期間と軍事力以外の手段が必要です。トランプ政権にそんな力はない。結局、威勢のいいドンパチのあと、勝った勝ったと空疎な宣言をして幕引きするくらいでしょう。
問題はそれが明日か、来週か、1か月後かです。
(2026年3月13日)
