最近の飛行機には超特等席があります。
ファーストクラスより上の、窓が5つも並ぶ広い専用スペースの座席です。1人分でエコノミーの10数人分になるのではないか。他の乗客から完全に隔離された、席というよりは特別室です(No Lines, No ‘Regular’ People: Flying Ultra-Luxury From Paris. April 6, 2026. The New York Times)。
エア・フランス航空は、パリ・ニューヨーク間のフライトに「プレミエール」というクラスを導入しました。
ベッドとソファが別々の広いスペース。ここを使う乗客はすべてが特別待遇です。

(同社ウェブサイトから)
出発地では、滞在先のホテルまでベンツが迎えにくる。空港では専用のラウンジがあり、ラウンジから飛行機までも専用車が用意される。保安検査や出国手続きは事実上フリーパスで、すべてエア・フランスが代行します。
機内ではフランス料理のフルコースを楽しみ、2メートルのベッドで横になれる。ニューヨークに着いてからも、通関や荷物の手続きはすべて航空会社まかせ、全行程にエア・フランスの専用スタッフが付きそいます。
待ち時間なし、行列なし、めんどうな手続きもいっさいなし。この豪華フライトの料金は1万1千ドル、約170万円。
取材したニューヨーク・タイムズのサラ・ライアル記者は、プレミエール席は特典やサービスとともに、そこに「ないもの」が肝心だといいます。
すなわち、一般旅行者の視線です。
座席が完全に隔離され、全行程が特別扱いだから一般旅行客と出会うことがない。それがプレミエール席を使う人たちの求めることでもある。

ファーストクラスより、さらに上の層へ。
超富裕層は、一般客の視界から消えていきます。
この現象は飛行機だけでなく、リゾート地やホテルでも起きている。人気リゾート地では超富裕層だけが使える占有区画が増えました。豪華ホテルでは、専用の入口、専用のエレベータ、専用の階があたりまえです。カリブ海では、70人が泊まれる豪華ホテルが1棟丸ごと、1泊2500万円で貸し出されている。
億万長者、いや兆万長者は、一般人の視線から姿を消しています。
それはまた、彼らの目から一般人が消えているということでもある。超富裕層にとって存在するのは「われわれ」だけで、「彼ら」は存在しない。
拡大しつづける格差は、人間の不在を内面化するまでになっています。
(2026年4月13日)
