ベネズエラ襲撃

 トランプ大統領がベネズエラを攻撃し、マデュロ大統領を拉致しました。
 テロリストを捕らえたというけれど、ベネズエラの石油支配が目的ではないか。いや人気低迷のトランプ大統領が、世論を引きつけるために起こした活劇かもしれない。
 そういう高みの見物はともかく、ぼくは今回の作戦の実行面に注目します。
 ニューヨーク・タイムズによればアメリカ軍の仕事は、今回は完璧でした(Inside ‘Operation Absolute Resolve,’ the U.S. Effort to Capture Maduro. Jan. 3, 2026. The New York Times)。

ベネズエラの首都カラカス

 米軍の特殊部隊、「デルタフォース」が拉致作戦を実行しています。
 作戦の直前、ベネズエラの首都カラカスでは数回の爆発が起きました。これは米空軍によるベネズエラ軍のレーダー、通信施設への爆撃です。同時にカラカス市内では大規模な停電が起きている。いずれも作戦の準備でした。
 ベネズエラ政府と軍幹部が休暇をとった日に、そのすきをついて米軍は動いている。2時間28分の作戦行動は、2千キロ離れたフロリダ州にいるトランプ大統領に生中継されました。

拉致されたマデュロ大統領(資料映像)
(Credit: Hossein Zohrevand, Openverse)

 拉致は、去年8月から準備されたものです。
 米軍は、ケンタッキー州にマデュロ大統領の官邸そっくりの模造建築を作り、ここで何度も「実地訓練」をくり返している。だから当日、大統領官邸に到着した特殊部隊は正門を爆破してから3分でマデュロ大統領の居室にたどりつきました。大統領が隠れ場所に入って厚い鉄扉を閉めようとしたところを、寸前で捕えている。マデュロ大統領はカリブ海上の米軍艦艇「硫黄島」に移送され、軍用機でニューヨークに連行されました。

 ベネズエラ当局によると、この作戦でベネズエラ側に数十人の負傷者が出ています。米軍側はヘリコプター1機が銃撃され負傷者が出たけれど、死亡者は出ていない。軍事的にはほぼ完璧な拉致作戦でした。

作戦に使われた米軍ヘリコプター「MH60」
(資料写真。Credit: PACOM, Openverse)

 アメリカはこうした特殊作戦をこれまでに何度も実行しています。
 失敗したこともあれば、成功したこともある。けれどこれまでの経験が今回の作戦に生かされていると思いました。国民もまた、軍事力を行使するととはどういうことなのかを多くの経験からそれなりに学んでいる。しかも軍事作戦の詳細が直後に報道されるなど、米軍の軍事力の使用には安定感があるとすらいえるでしょう。

 問題は、国際法違反の暴挙というきわめて強い批判があることです。
 そんな作戦を命じられた将兵には同情すら覚える。米軍、CIAは完璧な仕事をしたけれど、大統領はその「説明」をせず、できず、利権のために合理的な考察を欠いた衝動に走ったのではないか。だとするなら、ぼくらは真におそろしい時代を迎えたというしかありません。
(2026年1月5日)