久しぶりに政治の朗報です。
ニューヨーク市長選挙の予備選挙で、ゾラン・マムダニ候補が勝ちました。33歳、ムスリム政治家の躍進は、梅雨のさなかの晴れ間です(Mamdani’s Victory Spotlights a Deepening Rupture Among U.S. Jews. June 25, 2025. The New York Times)。
朗報といっても地方選挙、それも民主党予備選挙での勝利にすぎない。とはいえあのニューヨーク市に、ことし11月には初のムスリム市長が誕生するかもしれない。
マムダニ候補が注目されるのはムスリムということより、リベラルな政策です。
弱いもの、少数派の声を聞こうとする。だから選挙公約は公共バスの無料化や低所得層の家賃無料化、大企業や富裕層への増税など、保守共和党が怒り狂う政策ばかりです。

(本人の選挙公報サイトから)
トランプ大統領が「100%狂った共産主義者」とこき下ろすくらいだから、マムダニさんはきっと有望な、力のある政治家にちがいない。
ぼくは、彼の「過激度」に注目します。自分自身の思いこみに囚われたアジテーターなのか、それとも本気で民の声を聞く政治家なのか。
基準のひとつがユダヤ人とのかかわり方でしょう。
ムスリムのマムダニさんは、当然ながらイスラエルのガザ侵攻を「虐殺」と批判してきた。「ユダヤ人国家」イスラエルを認めていない。でも、ユダヤ人の存在そのものを否定しているわけではない。
現実的な視点を評価するユダヤ人もいる。たとえばアメリカ議会の有力なユダヤ人政治家のひとり、ジェロルド・ナドラー下院議員が25日、マムダニ候補支持を表明しました。「ヘイトと悪意に対し、ともに戦おう」と呼びかけている。
ユダヤ人もムスリムも、ともに差別と偏見に苦しんでいる、連帯しようというのですね。

こうした動きが、アメリカでどのように広がるか。
イスラエルがガザに侵攻して以来、アメリカの世論は変わっています。民主党支持者も7割がイスラエルに批判的になりました。ユダヤ人は、自分たちに向けられるヘイトと悪意に潜在的な恐怖感をつのらせている。そういう空気をあおるトランプ政治。
ほとんどのユダヤ人がマムダニ候補に警戒心を抱いてもおかしくない。けれど、ユダヤ人の5人に1人はマムダニ支持になっているといいます。
世の中がうまくいかないのを「誰かのせいにする」「憎しみをぶつける」のではなく、それがなぜかを考える、連帯の手をさしのべる。これがマムダニ候補の戦略であるなら、彼を過激派と呼ぶことはできません。
(2025年6月27日)