ロボットの戦争

 ウクライナの戦場を、「AIドローン」が飛んでいます。
 AIで高度に自動化されたドローンが、人間の判断を待たずにロシア兵を攻撃している。SFが現実になったかのように。AIが、戦争の概念を変えています(The Dawn Of The A.I. Drone. By C.J. Chivers. Dec. 31, 2025. The New York Timse)。

 ウクライナ戦場のAIドローンは、作家で調査ジャーナリストのC・J・チヴァースさんが1年半の現場取材を9千語あまりの長文レポートで伝えています。
 焦点のひとつが「バンブルビー」、マルハナバチという名のAIドローンでした。
 バンブルビーは、搭載されたAIが自分で敵を探しだし、追跡し、追いつめて自爆攻撃する。人間が遠隔操縦するのではないから、電子妨害も受けない。殺人ロボットが有無をいわさず空から攻撃してくるようなものです。
 2024年ごろ試作機が登場し、すでに数千機が実戦に投入されたとみられる。

マルハナバチ

 ロシア側は当初、内部報告でバンブルビーを「火星人」と呼び、「重大な脅威」と警戒しました。「世界最高の集積回路」を使ったバンブルビーは「試作機だが今後さらに進歩する。いまも、近い将来も、有効な対抗手段はない」と。
 それから1年以上、「試作機」は「第5世代」まで発達し、攻撃の精度と能力は格段に向上しました。熟練者でないと扱えなかったバンブルビーは操作が容易になり、兵士一人が複数のバンブルビーを同時に、しかも波状攻撃に使うこともできる。高速ワイファイがあれば、前線ではなく安全な遠隔地からも操作できる。
「殺人ロボット」が実戦に登場したことになります。

 バンブルビーは、形の上では人間が監督し運用している。けれど実戦では、攻撃の一定の段階からは「手動」が「自動」に切り換えられ、AIが独自の判断で目標に向かって飛びつづけ自爆する。人間の関与はどんどん少なくなっています。

ドローンを飛ばすウクライナ兵
(資料映像。Credit: Aerorozvidka, Openverse)

 いま現在、ドローンの大多数は人間が操縦する従来型で、AIドローンは少数派です。でもいずれAI型が戦場を席巻するでしょう。開発を進める技術者のひとりはいいます。
「われわれは怪物を生み出してしまった。これがどうなるか、私にはわからない」
 人間が関与しない完全自動ロボット兵器は、人を殺しても責任を問うことができない。倫理的に許されないから、作ってはいけないとされる。けれどウクライナの戦場では、事実上野放しになろうとしています。
 倫理を問う声はありません。米軍には殺人ロボットの禁止規定があるけれど、ロシアや中国にそんなものはない。彼らが殺人ロボットを持てば絶対に使う、先に使わなければこっちがやられるだけだと、ウクライナの戦場ではだれもが信じているようです。
(2026年1月5日)