温暖化で、専門家はこんなことも考えてるのかと驚きました。
かつて大気汚染の悪者だった亜硫酸ガスを、温暖化の対策に役立てようというのです。そんなことして大丈夫かという思いと、そこまでしないと温暖化は止められないのかと、あらためて事態の深刻さを感じます(A Responsible Way to Cool the Planet. By Zeke Hausfather and David Keith. Sept. 21, 2025. The New York Times)。
理屈はこうです。
亜硫酸ガス(二酸化硫黄)は、ほかの気体にくらべ太陽光を反射してはね返す率が高い。だから亜硫酸ガスを大気圏上の高空にばらまけば太陽光は弱まり、地上の温暖化は緩和される。亜硫酸ガスは大気圏のはるか上空にばらまく場合、地上の100分の1のレベルの健康被害しか起こさない。温暖化の防止は緊急の課題、真剣に検討すべきだ。

大胆な提案は、温暖化を研究する民間団体「ストライプ」のジーク・ハウスファザー博士やシカゴ大学の研究者たちのものです。
亜硫酸ガスが太陽光をさえぎり、地球に「寒冷化」をもたらすのは、かねて気候科学者の知るところです。火山の噴火でそういう現象が起きている。1991年に起きたフィリピンのピナツボ火山の20世紀最大の噴火は、大気圏上空に大量の亜硫酸ガスが広がり、その後数年、地球規模での気温低下をもたらしている。
これまでも、石油などの化石燃料から出た亜硫酸ガスは、温暖化の3分の1を抑制する効果を果たしてきました。石油を減らし、亜硫酸ガスが減れば温暖化は一段と悪化する。
ではどうやって亜硫酸ガスをまくのか。
ハウスファザー博士らは、高高度を飛ぶ飛行機で大気圏上空にまき散らすのが実現可能な方法だといいます。地上で亜硫酸ガスを発生させるよりずっと効率的です。オゾン層や降水パターンへの影響もあるだろうけれどお、それでも実現すべきだ。

すでに起きている二酸化炭素による温暖化は、驚くほど強固なしくみで、かりに二酸化炭素をこれ以上出さなくても、それで地球が寒冷化するわけではない。いったん暖かくなった地球は、今後数千年変わることがない。
地球を多少とも冷やしたいなら、二酸化炭素を減らさなければならない。これは膨大な費用がかかるが、それまでの時間かせぎとして亜硫酸ガスによる対策を考えるべきだ。
いわば、毒をもって毒を制するようなものだけれど、ぼくらが直面している温暖化、いや気候危機はなまじのものではない。何世代も先の子どもたちのことまで考えながら、科学者のいうことを聞くべきです。
(2025年9月24日)