針のないミツバチがいます。
針がないから刺さない、でも蜂蜜は作る。なんて平和なミツバチか。この針なしミツバチを、ペルーの地方都市がはじめて「保護動物」に認定しました。放っておくと絶滅してしまうので(Stingless bees from the Amazon granted legal rights in world first. 29 Dec 2025. The Guardian)。

(Credit; Mr AndrewHolmes, Openverse)
針のないミツバチ、「ハリナシバチ」を保護すると決めたのは、ペルー中部のいくつかの自治体です。サティポ州サティポ市では去年10月、ハリナシバチを条例によって地元の在来種と認定し、農薬などの環境汚染を防ぐなどして保護することを決めました。世界初の「ハリナシバチ保護条例」です。
背景にあったのは、ヨーロッパミツバチの進出でした。16世紀にヨーロッパ人が南アメリカに持ち込んだヨーロッパミツバチは繁殖力が強く攻撃的で、ハリナシバチを追いつめている。

(Credit: Geeshariff, Openverse)
熱帯雨林の減少とともに、ハリナシバチは減っています。むかしは森に入って30分もすれば見つかったのに、いまは数時間もかかる。先住民、アシャニンカ族のひとりは、自分たちは先祖代々ハリナシバチとともに暮らしてきたといいます。
「ハリナシバチはわれわれに食料と薬を提供してくれる。みんなで守らなければいけない。保護条例はわれわれ先住民と熱帯雨林の存在を認めてくれたものだ」
別の先住民は、ヨーロッパミツバチは人を刺すからこわいといいます。ミツバチが恐ろしいなんてことはなかったのに。

(Credit: Global Humanitaria, Openverse)
ハリナシバチは世界に500種類もいて、その半分がアマゾンに生息している。進化の過程で針をなくしたようだけれど、針のあるミツバチとおなじように蜜を集める。花に集まるポリネータ、授粉者でもあるから、アマゾンの自然環境にとってなくてはならない重要な役割を果たしています。
そういう平和なミツバチと先住民は、大昔から共存してきました。
そこに登場したのが、攻撃的な“針ありミツバチ”です。人工的な品種改良で蜂蜜の収量が多く、商業ミツバチの主流らしい。金もうけのための“針あり”と、先住民が自分の分しか取らない“針なし”と。経済原理のもとで“針なし”の立場は不利にちがいない。
資本主義の世界で針なしが生きのびるにはどんな戦略が必要か。それは経済原理ではなく、どう生きるかの問題なのでしょう。
ペルーの熱帯林のなかで、経済よりは環境を選んだ人たちがいることに、ぼくはすがすがしさを覚えます。
ハリナシバチ、飼ってみたい。
(2026年1月12日)
