北朝鮮軍の近代化が進んでいる。
ひょっとして原子力潜水艦ができるかもしれないと聞くと、重大な分かれ道という気がします。北が核ミサイルを搭載できる原潜を持てば状況は一変する。空洞化したトランプ政権のもとに、ほんとうの危機が近づいているのかもしれません(North Korea Gets a Weapons Bonanza From Russia. May 31, 2025. The New York Times)。
北朝鮮軍の近代化に貢献しているのは、ロシアの軍事援助です。
旧ソ連時代の軍事力を引きついだ北朝鮮は、経済制裁のもとで近代化が遅れるばかりだった。
しかし、ウクライナでの戦争がチャンスとなります。
キム・ジョンウン総書記は、ロシアを支援することで軍事協力を進め、一気に北朝鮮軍の近代化を進める戦略をとりました。

総書記の命令でロシアに派遣された北朝鮮軍は1万5千人、クルスク地区の戦闘でウクライナ軍から2つの村を奪還するなど、重要な戦果を上げたとされます。おそらく相当な犠牲を払ったはずだけれど、実態はわからない。
見返りに、ロシアは多大な軍事援助を行っています。
AIを使って攻撃するドローン、戦車に搭載される最新の電子制御システム、超音速ミサイルや新型防空システム、空対空ミサイルなど、さまざまなロシアの軍事技術が入りこんでいると韓国の情報筋は見ています。
それを裏付けるように、キム・ジョンウン総書記が新型兵器の公開に立ち会う場面がふえました。新型対空ミサイルの試射や北朝鮮初の駆逐艦の浸水式など、これまで北朝鮮軍にはなかった装備がつぎつぎと公開されている。
ソウルのシンクタンク、アジア政策研究所のヤン・ウク研究員は、「北朝鮮はいま戦略的な黄金期を迎えている」といっています。

なかでも重視されるのは、3月に公開された原子力潜水艦でしょう。建造中のこの原潜について、ソウルの専門家は「北がこれまでに見せたもっとも危険な兵器」といっている。
原潜には、ロシアの小型原子炉の技術が使われているのかどうか。
もし使われているなら、「核ミサイル搭載原潜」はアメリカを含む世界の安全保障にとって重大な脅威となります。
アメリカはロシアや中国とも連携しながら、あらゆる回路で北朝鮮との外交交渉を進めなければならない。だのにトランプ体制にそんな気配はみじんもありません。
悪のはびこる世界で、アメリカは悪を阻止しない。むしろ自身がもうひとつの悪になったかのようです。日本は、それに引きずられるだけなのでしょうか。
(2025年6月2日)