台湾は戦わない

 中国が攻めてきたら、私は降伏する。
 友人の台湾人はこういっていると、コラムニストのニコラス・クリストフさんはいいます。もちろん、そうではない台湾人もたくさんいる。けれど「政治的な意志において台湾はウクライナの対極だ」という指摘には重いものがありました(How War With China Begins. By Nicholas Kristof. Jan. 17, 2026. The New York Times)。

 中国は台湾を占領するために軍事行動を起こすだろうか。
 これは日本にとっても重大な関心事です。
 だれも予想できない。尊敬できる中国問題の専門家の多くが、今後10年以内には起きないとみている。クリストフさん自身も、数年以内に起きるとはみていない。

台北市

 ではしばらく平和かというと、そうではありません。
「グレーゾーン」の危機が深まってゆく。
 グレーゾーンというのは、ミサイルや戦闘機など直接の軍事力を行使する以前に、軍事、政治、経済などの圧力を強める戦略です。すでに台湾周辺では年々、中国軍の軍事演習や、戦闘機、艦艇などによる軍事プレゼンスの拡大、強化が進んでいる。

 今後ありうるのはグレーゾーンのさらなる強化です。サイバー攻撃による電力網やインターネットの撹乱、次いで海上封鎖が行われるのではないか。専門家グループ「台湾海峡危機報告」は、今後5年以内に中国が軍事行動を起こす可能性は30%、海上封鎖が起きる可能性は60%とみている。そうなれば、台湾の現政権は崩壊し、中国は一発のミサイルも使わずに台湾を制圧できる。
 アメリカが軍事行動を起こし、かりに勝っても、中国と台湾にそれぞれ10万、アメリカに6千の犠牲者が出るという予測もある。それだけの犠牲を、アメリカが受け入れるだろうか。

台湾海軍のミサイルフリゲート艦
(Credit: wbaiv, Openverse)

 最大の疑問は、「台湾市民はどうするか」だとクリストフさんはいいます。
 友人のジャーナリストは、中国が攻めてきたら降伏するという。経済界の知人は、中国が台湾の自治を許すのではないかと、ありえない事態を期待している。
「生存の危機に対し、もっとも明確な意思を示したのがウクライナだとするなら、台湾はその対極だ。多くの台湾人は祖国防衛に身を投げだそうとまでは思っていない」

 クリストフさんのコラムを読んでぼくが抱いたのは、台湾の最期は近いという感覚でした。
 中国はさらに強大になり、アメリカは救いようのない混乱を深めている。台湾をめぐる情勢もすでにぼくの思い込みは通じない。中国はグレーゾーン戦略を強め、台湾の自壊を待つだけでいいのかもしれません。
(2026年1月19日)