子どもがスマホを持っていない。
そんな町がアイルランドにあります。
ダブリンの南にある人口2万2千人の町、グレイストーンズ。ここでは、スマホを禁止するのではなく、子どもたち自身が納得したうえでスマホを持っていない。すばらしいと拍手したくなります(A Phone-Free Childhood? One Irish Village Is Making It Happen. March 25, 2026. The New York Times)。

子どもといっても、12歳まで。小学生のあいだということです。アイルランドでは子どもは平均9歳でスマホを持つので、それを3年ほど延ばすことになる。この3年には大きな意味があります。
スマホの子どもへの害がはっきり見えてきたのは、コロナ禍のあとでした。
自宅待機でネット漬けになった子どもたちは、十分な睡眠もとれず、孤立していた。弊害は一目瞭然だったと地元小学校のレイチェル・ハーパー校長はいいます。
「いま立ち上がらなければ、子どもたちは5歳や6歳でスマホを手にするようになる」
親のひとり、ロス・マクパーランドさんは「とにかくスマホの害ははっきりしていた」といいます。
保護者800人へのアンケート調査で、半数以上が子どもたちは不安になっている、何らかの精神保健上の対策をと訴えました。
これに応え、町内の小学校8校の校長が保護者に手紙を出しています。PTAで自主的な規則を作ってほしい、中学校に入る前の12歳まで子どもにスマホを買い与えないようにと。70%の親が署名し、町民集会が開かれ、2023年、町全体の運動がはじまりました。

この運動には、「町ぐるみ(It Takes a Village)」という名がつけられています。
スマホはひとりひとりの親と子の問題にしていたら解決できない、地域全体で進めようというねらいをこめて。
「町ぐるみ」は、アイルランド全国に、またイギリスやEUにも広がっているといいます。子どものスマホは「禁止」でも「放任」でもなく、地域全体で向かうことが大事とみんなが認めたからでしょう。
グレイストーンズのローレン・ハーネットさんは、ことし13歳になり、中学に入ってはじめてスマホを持ちました。彼女はいいます。
「みんなが持ってたら、ほしくなるよね。でも私、待つこともできたんだ」
友だちはスマホを持ってなかった。だから私も持っていなかった。いまはみんな持ってるから私もそうする。そのままでもよかったんだけど。
「子どものスマホ問題」の全体が、このひとことに要約されています。
(2026年3月27日)
