希望の理由

 数字より、熱気。
 選挙については何度も、そう思い返したことがあります。今度もそうかもしれない。

 5日投票のアメリカ大統領選挙は大接戦で、勝敗は誰にも予想できません。が、ニューヨーク・タイムズの最終世論調査には意外な変化がありました。南部の激戦地ジョージア州で、ハリス候補がわずかにリードしたのです(Nov. 3, 2024. NYT)。
 ハリス 48%、トランプ 47%。
 わずか1%の差は、統計的には誤差の範囲。でもハリス候補の「上昇」はまちがいない。

 接戦のジョージア州で、なぜハリス候補がわずかとはいえ盛りかえしたのか、マラ・ゲイ記者の現地レポートを興味深く読みました(There’s a Reason Harris Is Competitive in Georgia. By Mara Gay. Nov. 3, 2024. The New York Times)。

「多くの政治評論家は数か月前から、ジョージア州はトランプ候補が勝つと見ていた。私は先週、現地をくまなく歩いたが、有権者はけっしてあきらめてはいない」
 民主党のハリス候補の集会に、共和党員の姿もありました。トランプ候補のミソジニー、女性蔑視に反発する女性有権者もたくさんいる。黒人、ヒスパニック系、アジア系など、少数派がこぞってトランプ阻止に立ち上がっています。

 あるプラカードにこうありました。
「投票は私の黒い仕事」(Voting is my Black job)
 黒人の自分は、ハリス、民主党に投票する。黒人と「ブラックな仕事」を重ねたユーモアです。これは白人社会が、あらゆる手段で非白人に「投票させない」運動を進めていることへのしたたかな抵抗でもある。

 激戦地を見て回った黒人女性のゲイ記者は、あきらめていない人びとの熱気を伝えています。それは白人男性には書けない記事でしょう。そういう記事はバイアスがかかっているかもしれないけれど、バイアスを超えて伝わってくる現地の熱気があるとぼくは読みました。
 接戦を最後に動かすのは数字や戦略や理論ではない。高揚です。
 トランプ候補があおる分断と憎悪の熱気に、ジョージア州の女性、少数派が抱く熱気はどこまで高まっているか。それが勢いを持っているとすれば、「1%のリード」には理由があり希望があります。
(2024年11月4日)

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付記 このブログはこれまで週4回更新してきましたが、5年目を迎え3回にペースダウンします。量より質が実現できるといいのですが、寛容におつきあいください。