意外に「いい戦争」

 イランの戦争がはじまった当初、こんな愚行はないと思いました。
 この戦争は無計画、無謀といった批判、非難がアメリカ国内でも強かったと思います。
 ところが24日のニューヨーク・タイムズを見て、おや?と思いました。戦争は意外とうまくいっているというオピニオンが二つも並んでいたからです(The War Is Going Better Than You Think. By Bret Stephens. March 24, 2026. The New York Times)。

 ひとつは、保守系と見られるブレット・スティーブンスさんのコラムです。
 議論のポイントは、石油価格がそれほど上がっていないという点にある。
 イランの戦争がはじまってすぐ、原油価格は1バレル100ドルを超したけれど、それ以上あまり上がっていない。これは2012年、アラブの春で中東全体が不安定化したとき123ドルまで急騰したのにくらべれば(それはいまの価格では175ドルにもなる)、大したことはないという指摘です。

 スティーブンスさんは、今回の戦争でアメリカ軍はきわめて有能だったと評価する。自軍の損害は最小限にとどめ、ホメイニ体制とイラン軍に甚大な打撃をあたえている。
 トランプ大統領にまともな計画があったわけではないし、なぜ戦争をするか国民にちゃんと説明したわけでもなかった。にもかかわらず後世の人は、この戦争がイラクやアフガニスタンよりよほどましな戦争だったと振り返るだろうといっている。

 スティーブンスさんの論調全体からにじみ出るのは、こんな戦争をはじめて相当ひどいことになると思ったけれど大したことはないという、多くのアメリカ国民がいま抱いている実感でしょう。ガソリンが上がったのは痛いけど、この程度でホメイニ体制のイランが弱体化されるなら、それもまあいいんじゃないかという受け止め方。

テヘラン(資料映像。Credit: Mohammadali, Openverse)

 おなじようなトーンが、この日のもうひとつのオピニオン、ロス・ドーサットさんの論にも反映されていました(By Ross Douthat. March 24, 2026. The New York Times)。
 ぼくの一方的な解釈でいうなら、ドーサットさんは、今回の戦争でイランは十分弱くなったから、彼らの持つ核はもうそのままでいい、北朝鮮のようにはならないという見方を提示している。つまりこの戦争は、トランプが意図したようにはいかなかったけれど、戦争をするだけの意味があったというのでしょう。

 なるほどなあ、そんなふうに見るのかと、ぼくは感心しました。
 イラン戦争の見方を、またまた変えなければなりません。こういう情勢のもとでは、“確固とした見方”は危険です。コロコロ変わることで、ようやく実情に多少は追いついているという感覚がもてる。ほんとは現地にいるのがいちばんいいのだけれど。
(2026年3月25日)