ここまでひどくなるとは。
予想しなかったわけではないけれど衝撃です。トランプ大統領がウクライナをぶち壊そうとしている。ゼレンスキー大統領を独裁者とののしり、本物の独裁者プーチン大統領にすり寄ってウクライナ抜きの停戦をくわだてている。
醜悪だと、ニューヨーク・タイムスのニコラス・クリストさんはいいます(With Trump’s Prostration to Putin, Expect a More Dangerous World. By Nicholas Kristof. Feb. 19, 2025. The New York Times)。

「トランプと彼の取り巻きどもが、戦後アメリカが築きあげ、平和と繁栄をもたらした諸外国とのつながりや約束、価値をぶちこわしている」
クリストフさんにこう語ったのは、イギリスの保守政治家、クリス・パッテン氏です。元サッチャー政権の閣僚で、日本の皇室とのつながりも深い。
「私はアメリカを愛しているし、アメリカの大統領を自由世界のリーダーとみなしてきた。もうそうではない。私が大事にしたアメリカの理念はどこにいってしまったのか」
パッテン氏と思いを共有するクリストフさんは、アメリカは冷戦時代のソ連の衛星国のようだといいます。
「私はウクライナを訪れ、ロシアの侵略者によるウクライナ人への拷問や、子どもたちの拉致を取材してきた。強姦された女性は私に、自分たちを見捨てないでほしいといった。トランプは彼女たちを見捨てた」

民主主義の破壊と混乱がアメリカ国内にとどまるならまだいい。しかしいま、長年の国際関係までもが根底から崩されようとしています。
リトアニアのランズベルギス元外相はいいました。
「トランプのプーチン支持に対抗しなければ、ヨーロッパはただちに危機を迎える。ウクライナだけでなくモルドバ、ジョージア、その他の国でも戦争が起きるだろう」
クリストフさんは指摘します。
「これはヨーロッパだけの問題ではない。これから予想される悪夢の最たるものは、台湾か南シナ海でのアメリカと中国の戦争だ。トランプが同盟国との協調を乱すのであれば、中国は台湾に向けて動き出すだろう」
トランプの「アメリカ一国主義」は、工業力だけでなく同盟関係までも失い、中国との戦争に勝てなくなる。
ウクライナの苦難は、いずれ台湾の苦難になるのではないか。そのときぼくらは、いまのウクライナ人の境遇を、そのごく一端にすぎなくても思い知らされることになります。
(2025年2月21日)