自閉症という才能

 自閉症のシェフが増えている。
 自閉症「でも」シェフになれるのではない。自閉症「だから」シェフになれるという話です(For People With Autism, Can Restaurant Kitchens Be a Haven? By Pete Wells. April 5, 2026. The New York Times)。

 自閉症の人をシェフにする運動は、「スペクトラム・シェフ」(Chefs on the Spectrum)と呼ばれている。
 マンハッタンの有名レストラン「ポイント・セブン」のオーナーである、フランクリン・ベッカーさんがはじめました。レストラン業界ではいいシェフが足りていないし、自閉症者の雇用をすすめるべきだと。

「ポイント・セブン」オーナーのフランクリン・ベッカーさん
(ポイント・セブンのウェブサイトから)

 ポイント・セブンのキッチンではいま、自閉症のジョセフ・ヴァレンチノさんが働いています。ヴァレンチノさんは自閉症で、5歳まで発語がなかった。いろいろな仕事をしてきたけれどうまくいかない。ポイント・セブンに来て才能を発揮し、冷菜やペストリー、それにロウ・バー(生鮮魚介類盛り合わせ)を受け持つまでになりました。

ポイント・セブンのバー
(ポイント・セブンのウェブサイトから)

 自閉症者がなぜ、ほかではだめだったのにポイント・セブンではうまくいったのか。
 それはこのレストランが、自閉症者の訓練以外のところに力を入れたからです。自閉症者とともに働くには、どういう理解や対応が必要かを、事前に本人以外のスタッフに教育した。そうすることで、受け入れる環境を作りました。
 彼らを変えるのではなく、自分たちが変わる。これは「障害者」といわれる人びととかかわるときの基本でしょう。

(ポイント・セブンのウェブサイトから

 もうひとつの肝心なのは、これが「慈善事業」ではなかったことです。「スペクトラム・シェフ」を進めるベッカーさんはいいます。
「自閉症の人を雇うのは危険だという見方がある。でもほんとの危険は、彼らのすばらしい才能を見逃してしまうことだ」
 自閉症者は、特定のテーマに強い興味を持ち、のめりこんで飽きないことがよくある。そういう特性がうまく生かされたとき、ほかの人にはない力を持つ。調理は、適正が合えば自閉症者にとって大きな可能性が開かれる領域でしょう。他人との対面が少ないのも、彼らにとっては快適な環境になる。

 自閉症のシェフ、ヴァレンチノさんはいいます。
「いつかは主任シェフになり、自閉症でも頂点に行けると示したい。私には情熱と決意がある。それに、私は遅刻しない」
(2026年4月8日)