自閉症のバービー

 バービー人形の玩具メーカー、マテル社が「自閉症のバービー」を発売しました。
 多様な子どもたちが存在することを認め、社会への受け入れを進めるために(Mattel launches its first autistic Barbie. 12 Jan 2026. The Guardian)。
 マテル社のウェブサイトを見ると、自閉症バービーは1月11日に発売されています。

自閉症バービー(中央の1人。マテル社ウェブサイトの広報資料より)

 真ん中にいるのが自閉症バービーです。
 写真ではわかりにくいけれど、視線がわずかに横にズレている。これは自閉症児は相手と視線を合わせるのが苦手という特性を表しています。ピンクのヘッドホンをしているのは音楽を聞くのではなく、周囲の音を遮断するためです。自閉症児のなかには周囲の音に敏感すぎる子がいるので。
 手に持っているのはスピナーと呼ばれる三角形の器具。これをぐるぐる回していると落ちつく子がいます。もう一方の手にあるのはミニ・タブレットのような会話補助具、これでことばをしゃべらなくても一定のコミュニケーションがとれる。

スピナー(指先でくるくる回す器具)

 自閉症バービーは、マテル社がアメリカの自閉症者団体、ASAN(Autistic Self Advocacy Network)のアドバイスをもとに作りました。このバービーを見て、自閉症児は「これは自分だ」と思う。人形にも自分とおなじ存在がいると知り、自分に自信を持つことができます。
 マテル社の人形部門責任者、ジェイミー・シギルマンさんはいいます。
「自閉症バービーによって、この世界の経験のしかたは人それぞれにちがうということがわかるのではないか」

 マテル社は自閉症のほかにもいろいろな “マイノリティ・バービー”を作ってきました。車椅子バービーやダウン症バービー、糖尿病バービーもあります。バービーはあらゆるタイプの子どもを包摂するということでしょう。
 おもちゃメーカーは子どもをよろこばせているだけかと思ったら、とんでもない、子どもを通して社会を変えているのかもしれません。マテル社の積極果敢な取り組みに少なからぬ敬意を覚えます。

車椅子バービー(マテル社広報資料から)

 でもしかし、と、ちょっと立ち止まる。
 これはやはり、アメリカの自閉症“インフレ”のおかげではないか。自閉症はかつて1万人に2人から4人とされていたのが、2013年に診断基準が改定され、31人に1人にまで増えている。市場が広がったからこそ、マテル社も新商品を投入できたのでしょう。
 そうではあるけれど、自閉症バービーは自閉症への理解を広げ、ぼくらの多様性への認識を進めると評価したい。
 多様性を否定するトランプ政治への、ささやかな抵抗にもなることだし。
(2026年1月16日)