認知症の医学的な捉え方が変わっています。
これまでアルツハイマー型とされていた認知症のなかに、アルツハイマーとはちがう「LATE」というタイプがあるとわかってきました。それもかなりの割合であるらしい。認知症全体の捉え方が変わります(A Different Type of Dementia is Changing What’s Known About Cognitive Decline. Nov. 28, 2025. The New York Times)。
LATEは、「大脳辺縁系優位型老年期TDP-43脳症」(Limbic-predominant age-related TDP-43 encephalopathy)の略です。
アメリカで提唱されている新しい診断基準では、LATEは65歳以上の1割、85歳以上の3分の1にみられるといいます。いまアルツハイマー型とされる人の多くがじつはLATE型ではないかとも。またLATEはアルツハイマーと同時に発症することもあり、「純粋LATE」がどのくらいの割合であるかは、まだはっきりしていない。

LATEについては、いいニュースと悪いニュースがあります。
いいニュースは、LATEはアルツハイマーにくらべ症状が軽く、進行も遅いこと。悪いニュースは、LATEとアルツハイマーの両方があると症状はさらに重くなり、進行も速まることです。
どちらも、脳内に異常なタンパクが蓄積されて発症する。そのタンパクが、アルツハイマーならアミロイドβとタウ、LATEの場合はTDP-43です。病因となるタンパクのちがいが、認知症の症状のちがいになるらしい。
ケンタッキー大学のピート・ネルソン博士が2019年、この新型認知症を論文にして公表しています。長くむずかしい病名をハーバード大学の学者が「LATE」と呼び、認知症研究者のあいだでは広く認識されるようになりました。
ネルソン博士は、LATEを見出すきっかけをこういっています。
「自分の患者の30%が認知症なのに、アルツハイマーの診断がつかないことだった」
脳を調べてもアルツハイマーの特徴である「アミロイド斑」が見られない。よくよく調べたら、TDP-43というタンパクがみつかったということです。

アルツハイマーもLATEも、認知症であることに変わりはない。ともに根本的な治療法はありません。けれどアルツハイマーは最近、病気の進行を遅らせる治療法が登場し、臨床に応用されています。ところがアルツハイマーの一部はLATEだったとわかり、その場合治療は無効だったと考えられるようになりました。
LATEに対しては、進行を遅らせる別な治療法の治験がはじまっています。
研究が進んでいるとはいえ、いまのところぼくらは認知症は治らないと覚悟しなければならない。
どうせなるならLATEがいいなと、ちょっと思ってしまうけれど。
(2025年12月24日)
