軽くなった飛行機

 アメリカの航空会社に、意外な追い風です。
「やせ薬」がブームになり、乗客の体重が減っている。機体が軽くなったぶん、燃料が節約できているらしい。やせ薬はそこまでの社会変動を起こしています(Weight-Loss Drugs Could Save U.S. Airlines $580 Million Per Year. Jan. 19, 2026. The New York Times)。

 大手航空会社4社、アメリカンとデルタ、サウスウエストとユナイテッドは去年、1年間で386億ドル、約6兆円の航空燃料を使いました。ところが乗客の体重が減り、機体が軽くなったことで燃料の1.5%を節約できたといいます。その額は日本円で900億円にもなる。
 これを調査したのはジェフリーズ(Jefferies)という投資調査会社なので、学術研究のような信頼度はない。けれど投資家には有用な情報でしょう。航空機の重量が2%下がれば、株の配当は4%上がるというから。

 航空会社は、機体の重量を減らすためにあらゆる努力をしている。アメリカン航空は機内食のサラダに入れるオリーブを1個減らし、年間4万ドルの経費を減らしたという逸話があります。機内食のオリーブは、だからもちろん「種なし」になっている。
 必死の減量作戦にもかかわらず、乗客の体重だけはこれまで問題にできませんでした。それがやせ薬で自然に減っている。こんなうまい話はないでしょう。

 それにしても。
 飛行機が軽くなるほどにまで、やせ薬は広がっているのか。
 医療調査団体KFFによれば、去年11月の時点でアメリカ人8人に1人が「GLP-1」というタイプのやせ薬を使っています。たしかに飛行機も軽くなるかもしれない。航空会社は発表していないけれど。

GLP-1の1種「オゼンピック」
(Credit: chemist4u, Openverse)

 GLP-1はこのブログでも何度か取りあげました(2024年12月2日、2025年2月5日など)。薬の効き方のメカニズムからして画期的な新薬です。正確には「GLP-1受容体作動薬」、もともと糖尿病の治療薬です。ところがこの薬は脳中枢にも作用し、食欲を落として体重を減らす効果がある。いまでは糖尿病より肥満の治療薬となり、商品名オゼンピックやウェゴビー(ウゴービ)など、いくつものタイプが出回っています。

 GLP-1は薬物依存や腎臓病など多様な疾患にも有効で、使用範囲が広がっています。その一方、離脱がむずかしく、うつになるなど副作用の問題も出てきました。
 脳に対しても働くGLP-1は、一種の向精神薬でもある。けれど多くのアメリカ人はそんなことを気にしない。ここでもまたビッグファーマ、巨大製薬企業の戦略が浸透しているのでしょうか。
(2026年1月21日)