鳥が消える

 鳥が減っている。
 きっと世界的な傾向でしょう。数が少なくなっているだけではなく、少なくなる速度が速くなっている。とくに工業的な農業が進む地帯で(Birds Aren’t Just Declining. They’re Declining Faster, a New Study Finds. Feb. 26, 2026. The New York Times)。

 鳥がどれほど増えたり減ったりしているか、鳥の「人口動態」については、ジョージタウン大学のピーター・マラ教授が2019年に発表した論文が有名です。
 マラ教授は1970年以来、アメリカとカナダの鳥類は29億羽、率にして29%も減少したことを明らかにしました。
 根拠となったのはアメリカ地質学研究所が長年行ってきたモニター調査です。この調査は、長さ25マイルにおよぶ決まったルートで、毎年野鳥を観察します。このうち1033ルートで261種類の鳥について分析したところ、1987年には平均して2034羽の鳥を観察していたのが、2017年にはその数字が304羽、15%も減っていた。
 北アメリカの鳥はあきらかに減っている。

 今回サイエンス誌に発表された新しい論文は、減少の率がさらに速くなっているといいます。34年前に1ルートで10羽減っているとすれば、いまは19羽減っている勘定になる。
 なぜ減っているのか、これを統計学的な手法で分析すると、農業との強い関連が浮かびます。研究を進めたオハイオ州立大学のフランソワ・ルロイ教授は、「農業の集約度の高さが、つねに減少の加速を予告する」という。大量の化学肥料と殺虫剤を使う工業的な大規模農業、いわゆる集約農業が進む地域では、あきらかに鳥が減っている。年々、速度を増して。

 農業とともに重要なのは気候危機です。
 鳥の減少がもっとも顕著だったのはフロリダ、テキサス、ルイジアナなどで、過去30年間、気温が上昇している。温暖化が鳥の生態を乱しているのでしょう。
 鳥の減少には多様な要因が働いている。でも人間の活動の広りが鳥の数を減らしているという大きな構図は変わらない。

 いまある自然は、百年後には一変しているでしょう。逆にいまぼくらが見ている自然も、百年前はまったくちがっていたはずです。
 かつて北半球にいたペンギンは、ヨーロッパ人による乱獲で絶滅しました。アメリカの空を黒く覆うほどたくさんいたリョコウバトも、目撃した人はもういない。この世に鳥が無数に飛び交っていた夢のような光景を、ぼくらは知りません。
 このペースで減少すると、百年後には鳥そのものが姿を消すかもしれない。荒涼とした光景だろうけれど、そのころの人間にはそれがあたりまえになるのでしょうか。
(2026年3月18日)