知りませんでした。こんな言葉。
ACE、Adverse Childhood Experience、日本語では「小児期逆境体験」です。
子どもの受ける虐待や性的被害などのひどい体験のことですが、こうした子ども時代の逆境体験、ACEのある子は、おとなになっても精神的、身体的にさまざまなマイナスの影響が現れます(Childhood Trauma Doesn’t Have to Be a Lifelong Curse. Jan. 31, 2026. The New York Times)。
ACEは、カリフォルニア大学のV・J・フェリッティ教授が1998年に報告した大規模な研究で広く知られるようになりました。
この研究は、逆境的な体験をした子は、おとなになってから精神疾患やがん、アルコール依存や自殺を起こす確率がきわめて高くなるといっています。このことから、社会規模で多くの疾病を予防し減らすためには、ACE、小児期逆境体験への取り組みが必要という認識が強まりました。

ACEに対する取り組みのひとつと紹介されていたのが、HOPE(Healthy Outcomes from Positive Experiences)という運動です。
HOPEは、逆境にある子どもやその親、家庭に、できるだけ「ポジティブな経験」をしてもらう。たとえば虐待をしてしまう親や子に支援者が寄りそい、ひとりぼっちだと感じさせないようにするとか、助けになってくれる人がいると思わせること。
ポジティブな経験こそが、人を逆境から救います。
助けてくれる人がいると思えるだけで、人は生きのびる。「まともな」おとなになることができる。ポジティブな経験がないと、おとなになってから病気や問題を起こしかねない。

ACE、小児期逆境体験は、要するにトラウマのことかとぼくは思いました。
PTSDの新しい呼び方かと。でもそうではない。
たまたま読んだ岩手大学の八木淳子教授の論文には、ACEは虐待だけでなく、いじめ、大規模な災害、戦争や事件事故、貧困、機能不全家族など多岐にわたる現象で起きるとあります。だから八木教授は、2011年の東日本大震災後の被災児を調査をしてきました。震災でも、子どもたちのなかには虐待とおなじ現象が起きるので。
PTSDやトラウマという言葉に対し、ぼくはなんとなく個人の問題というイメージを持っていました。でもACEといわれると、社会的な広がりを感じます。八木教授も、ACEの予防と適切なケアは、たんに精神医学だけでなく「医療界を挙げて取り組むべき」問題だといっています。
認識を改めました。
(2026年2月9日)
