殺人ロボット稼働中

 ウクライナの戦場ではすでに殺人ロボットが使われている。
 ニューヨーク・タイムズが広範な取材でその事実を伝えています。AI、人工知能を装備した自走式の機関銃、自律型の攻撃ドローンなどがすでに実戦で使われている。殺人ロボットの現実は、規制を求める議論のはるか先を行っています(A.I. Begins Ushering In an Age of Killer Robots. July 2, 2024. The New York Times)。

 実用化を急いでいるのはまずロボット機関銃です。
 自走式の4輪バギーのような乗り物に機関銃を積む。その横にはカメラと、カメラに接続したAI。カメラが敵のロシア兵を認識すると機関銃を射つ。ロシア兵が移動してもAIは補足しつづけるし、バギーは荒れ地を移動できるのでロシア兵は逃げることができない。

 ロボット機関銃が重視されるのは、人間の機関銃手は敵にねらわれやすいからです。機関銃は戦場ではもっとも優先度の高い攻撃目標になるので、人的被害を減らすためにロボット機関銃の開発は急務です。

 ついでドローン。
 最新型のドローンはただ敵を補足するだけではない。戦場の膨大な情報を取りこみ、敵の動きのパターンをディープラーニングで補足する。これは人間の目より正確です。その認識技術には、スキー場のスノーボーダーを追跡し、撮影するソフトウェアが使われている。AIがスノーボーダーをロシア兵に置き換えて追跡、攻撃するわけです。敵兵を認識する画像処理技術には、果物の収穫に使われるAIが活躍している。どの果実が収穫期か、出荷できるか、選んで決めるAI技術が、ロシア兵の認識に活用される。
 最新型のドローンは1機ではなく、何機も編隊を組んで攻撃する。そうすることでジャミングをかわし、「自律的な攻撃」が可能になります。

 いつのまにか、殺人ロボットが戦場の当たり前の光景になろうとしています。まだ数は少ないけれど、現地からの映像を見ると試作品がどんどん戦場に投入されているのがわかります。それらは実戦で効果をあげているらしい。
 ウクライナでは、殺人ロボットを開発するベンチャー企業が林立しています。彼らは、自分たちががんばればがんばるほど、ウクライナ兵の犠牲を減らせると意気込んでいる。しかも無数のベンチャー企業の背後には、欧米の巨大軍事産業が暗躍しているらしい。

 殺人ロボットは、核兵器や毒ガスのように国際条約で禁止すべきだという考えがあります。けれど前線の兵士にいくらそんなことを呼びかけても意味はない。この流れは当分止めることができないでしょう。いま気を配るべきは、そういう軍事技術が民生に転用されるのを防ぎ、規制することくらいしかないようです。
(2024年7月5️日)