劣化する観光公害

 観光公害が、ついに地元民による観光客への発砲事件にまで発展しました。
 でも、発砲に使われたのは水鉄砲だった。ということで観光客にけがはなかったけれど、スペインのバルセロナでは水をかけられた観光客がカフェから逃げ出す姿が目撃されています。
 あまりに多くの観光客に、地元が悲鳴を上げる。いずれ京の錦市場でも、行儀の悪い観光客には平成の新選組が豆鉄砲を打ち込む、なんてことが起きるかもしれない(Fed up with tourists, Barcelona protesters blast them with water guns. July 9, 2024. The Washington Post)。

バルセロナ

「観光客ゴーホーム」
 地元民が町の中心をデモ行進したバルセロナでは、6日、参加者の一部がそろって水鉄砲を構えました。そして道路ぎわのカフェにいた観光客に「発砲」、はじめは何が起きたかわからなかった観光客も、抗議行動とわかり苦笑いしながらカフェを逃げ出しています。

 現場はワシントン・ポストが撮影し、以下のサイトにアップしています。

 バルセロナの観光公害は、世界的にも突出している。人口170万人の都市に去年は2600万人が訪れ、市民は「もう来ないでくれ」と悲鳴をあげている。「観光“抑制”市民連合」が組織され、広範な市民組織が加わって今回のデモ行進になりました。
 バルセロナ市長は抗議に応え、市内の宿泊施設1万人分の地元への転用、観光客への増税などを発表しています。

 観光公害を研究するシンガポール大学のT・C・チャン教授は、バルセロナには以前から“観光客お断り”サインが目立ったが、「直接行動」が起きたのは、世界的にも初のケースではないかといっています。
「こうした動きはヨーロッパ各地に広がるだろう」

 すでにアムステルダムは新しいホテルの建設を禁止し、アクロポリスは入場人数を制限し、ベニスはクルーズ船を禁止するなど、さまざまな規制がはじまっている。5月に日本の富士河口湖町でコンビニの横に黒幕が張られ、写真撮影に殺到する海外の観光客を「撃退」するエピソードがありましたが、観光公害の好例として海外でも広く報道されました。

 デジタル化、大衆化の今日、観光はかつての観光ではなくなりました。
 日常の拡大にすぎない非日常、感動と快楽を消費するだけの冒険。
 ぼくらがあこがれた「旅」のロマンは、もう跡形もありません。
(2024年7月11日)