引きさがる女性たち

 アメリカで、仕事をやめる女性が増えている。
 この1世紀ずっとつづいてきた女性の進出が止まり、後退しているらしい。トランプ政権の影響はここまで及んでいると、コラムニストのジェシカ・グロースさんが指摘しています(American Women Are Leaving the Work Force. Why? By Jessica Grose. Oct. 1, 2025. The New York Times)。

 ルーズベルト研究所によれば、2024年1月以来、アメリカ女性の雇用率は男性にくらべて2%減っている。タイム誌によればことし1月から8月にかけ、21万2千人の女性が離職したが、男性は4万4千人が就業している。ジェンダーギャップは拡大していると経済学者のキャスリン・エドワーズさんがいいます。
「どんな人種や学歴グループの就業人口を見ても、女性の収入は男性より減っている」

 なぜ働く女性が減っているのか。専門家のひとりはいう。
「原因はひとつではない。働く女性には全般にひじょうなマイナス圧力がかかっている」
 たとえば育児費が去年までの5年間で29%も上がった。とても払えないから、幼児をかかえる多くの母親が仕事をやめる。

 原因は多々あるだろうけれど、グロースさんはトランプ政権のメッセージがきわめて冷酷な効果をもたらしているといいます。
「多様性と包摂」の全面的な否定です。
・・・女性や黒人が社会に進出したのは有能だったからではない。トークニズム(tokenism)、名目主義、えこひいきのせいだ。国の経済と社会の安定にとって最重要の課題は、白人男性が仕事につくこと。女性が失業しても社会の大勢に影響はない・・・

 こうした変化に反応し、大企業の主要500社はジェンダー・ギャップに目を向けなくなりました。多くの企業が女性幹部の比率や男女間の給与格差を公表しなくなった。格差を議論する以前に、議論のもととなる事実、データを消している。
 男女格差を議論することそのものが、生意気だ、過激派だと攻撃されかねません。

 女性が仕事をやめるようになったのは、社会全体に大きな変動が起きていることの反映でしょう。
 ジェンダー・ギャップを超えた動きです。強いものが勝ち、弱いものは負けるという単純明快な社会への希求がある。その根底には、そこから落ちこぼれたらたいへんだという恐怖があるにちがいない。恐怖を恐怖と自覚しないまま、それによって駆動される社会。
 日本にもまた、おなじ変動が起きているのではないかと懸念します。
(2025年10月15日)