格差は世界中で「さらに」拡大しています。
世界人口の1%が、世界で生産される富の41%を手にしているという、ノーベル賞経済学者、スティーグリッツ博士のレポートを先月紹介しました(11月5日)。
新しく出た別のレポートが、さらに広がる格差を伝えています。世界のわずか0.001%の人が、下位50%、40億人の富を合計したものの3倍もの富を所有している。いったいどうすればいいのか(Just 0.001% hold three times the wealth of poorest half of humanity, report finds. Wed 10 Dec 2025. The Guardian)。
新しいレポートを出したのはEU、欧州連合などが出資する非営利研究機関、WIL(世界格差研究所、World Inequality Lab)です。
WILの2026年報告によれば、世界の富裕層10%は、残り90%をすべて合わせたより多くの富を獲得している。世界のほとんどの地域で、トップ1%の富は下位90%の富の合計よりも多くなりました。その差は年とともに広がっている。

報告をまとめたパリ経済大学のリカルド・ゴメスカレラ教授はいいます。
「ひとにぎりの人が人類史に例を見ない財力を有し、残り数十億は経済的な安定をえられない、それがいまの世界だ」
経済学者トマ・ピケティ氏もいいます。
「格差は世界経済の常態とはいえ、緊急に注視すべきレベルに達している」
異常な格差は、経済をそこなうだけでなく、民主主義をもおびやかします。

もうこうなったら革命しかない。
そう考えたくもなるけれど、早まってはいけない。格差を是正する方法はあるとWIL報告はいいます。
公共投資を増やすこと、とくに教育や保健政策に力を入れること、そして適切な税制を実施すること。
世界で10万人足らずの最富裕層に対し、税金を3%上げれば100兆円の税収になる。たとえばそれを低所得層の教育費にあててはどうか。
ところが対策は進まず、税制は変わらない。一般に金持ちは高額の税を納めるけれど、なぜか「超富裕層」はそれほど税金を納めません。彼らには税金を逃れるための豊富な対策、資源、そして政治力があるからです。WIL報告はいいます。
「対策はある、進めるかどうかは政治の問題だ」
格差は、選挙民が選択した結果でもある。選択を変えないかぎり、この異様な格差が縮小に向かうことはありません。
(2025年12月12日)
