スマホを白黒にする

 知らなかった。こんなワザがあるんですね。
 スマホの画面をモノクロにする。それだけでスマホの使い方が大幅に減るそうです。スマホ依存症の人にとって効果的な対策かもしれない(I Killed Color on My Phone. The Result Shocked Me. By Julia Angwin. Dec. 25, 2025. The New York Times)。

 スマホ画面をカラーからモノクロに変えたのは、コラムニストのジュリア・アングウィンさんです。
 画面を白黒にしたら、スマホが気にならなくなった。そうなってはじめて、自分はスマホにとらわれていたことに気づきました。「とらわれ」から救われたという思いがあったといいます。

 調査報道を手がけるアングウィンさんは、ヘビーユーザーでした。
 1日8時間以上、スマホやノートパッドを見ていた。それが画面をモノクロに変えたら4時間あまりと、半分近くにまで減った。
 仕事から帰っても、スマホを部屋に置いたまま台所に持ちこむことがなくなりました。数分おきにしていたスマホ・チェックを、もうしていない。気がつけば数時間、チェックしなかったこともある。そうなってはじめて、自分は依存というより強迫性障害だったのかと、ふり返るようになりました。

 若干の不便はあります。
 娘のハロウィーンの写真がわからず、カラーに変えたらテントウムシのぬいぐるみとわかった。それ以来、必要があれば一時的にカラー画面にもどるようにしている。
「でもすぐ白黒にもどりたくなる。カラーのスマホは鮮やかで明るすぎて、まるでタイムズスクエアのLED大画面を見てるみたいで」
 スマホのカラーを消したら、現実世界の色彩や美しさに敏感になった。読書や映画、友人との会話も増える。自分はもうカラーにはもどらないだろう。

 ぼくも、スマホを白黒にしてみました。
 カラーが消えると、ストンと落ち着いた気分になる。そしてちょっとつまらない。
 なるほど、こういうことかと納得しました。
 このワザ、いつかだれかに勧めてみたい。

 ぼくは40年テレビで働き、映像でどう人を引きこむかを考えてきました。スマホの「絵づくり」の裏側も、およそ想像がつきます。これでもかと人目を引くあらゆる技巧が駆使され、しろうとは容易なことでは抵抗できない。離脱は、あきらめたほうがいい。
 あきらめたくないなら、カラーを消す選択肢があると知っておくべきです。
(2025年12月29日)