ぼくらはいつまで、人間が自動車を運転することを許すのか。
交通事故死をゼロにしたいなら、すべての車をロボット運転に切り替えるべきだ。こんな主張が救急医療の現場から出ています。
無人運転は、もはやものめずらしさの段階ではない。事故をなくし、人の命を守るための緊急課題だといわれます(The Data on Self-Driving Cars Is Clear. We Have to Change Course. By Jonathan Slotkin. Dec. 2, 2025. The New York Times)。
主張しているのは救急医療にたずさわる外科医、ジョナサン・スロトキン博士です。博士は最近公表された自動運転のデータを分析し、ロボットが運転のほうが人間より圧倒的に事故が少ないことをつきとめました。
根拠となったのは、自動運転タクシー、通称ロボタクシー「ウェイモ」のデータです。ウェイモは2018年からサンフランシスコやアトランタなど、4大都市でロボタクシーを運用している。これらの都市では、中国の上海とならびロボタクシーが日常の光景です。2025年6月までの運用実績は、総計1億マイルに達しました。

(Credit: Dllu, Openverse)
データには、どこでどんな事故が起きているかの詳細が含まれている。これをもとにスロトキン博士は、「おなじ走行距離を人間が運転するのとくらべて、無人運転車が事故を起こす確率はきわめて少ない」といいます。
ウェイモが“重大な死傷者の出る衝突事故”を起こす確率は人間の車より91%少ない。“軽症者が出る事故”は80%減です。
これまで起きた3件の死亡事故は、ウェイモではなく人間の運転する対向車が原因でした。
ロボタクシーが安全な理由は明白です。交通規則を守るから。よそ見をせず、スピードを出しすぎることもないから。
「アメリカの交通事故死は去年3万9千人、救急センターに運びこまれる人は毎日1千人にもなる。経済的損失は年間1兆ドル、軍事予算より多い」

(緑色は試験走行中。ウェイモ社サイトから)
ウェイモは先週、サンフランシスコの大規模な停電で停止するなど、まだまだ問題があるとされる。けれど運用は定着しており、あともどりすることはないでしょう。
自動運転技術を、タクシーだけでなく一般車にも広げるべきだとスロトキン博士はいいます。ただしいま一般車に搭載されている、運転者を補助するだけの「自動運転」はではなく、ロボタクシーのような「完全自動運転」を広げるべきだと。
ウェイモの自動運転システムは1台あたり10万ドル、1500万円といわれ、一般車にはなかなか搭載できません。でもことは人命がかかっている。ぼくらはあらゆるくふうを重ね、高齢ドライバーから運転免許を取りあげるようなことより、「完全自動運転」の未来を実現すべきでしょう。
(2025年12月31日)
