民主主義が後退し、全体主義が強まるとともに、「知」への弾圧が進んでいます。
「テキサスA&M」という有名な大学で、大学理事会が「プラトンを教えてはならない」と通達を出しました。
一瞬、耳を疑います。
プラトンを批判し、否定するならまだわかる。でも「教えてはならない」というのは哲学の否定です。そういう大学は、いま以上にトランプ的なアメリカ人を増やすだけではないか(Texas A&M, Under New Curriculum Limits, Warns Professor Not to Teach Plato. Jan. 7, 2026. The NewYork Times)。
通達を受けたのは、テキサスA&M大学のマーチン・ピーターソン哲学科教授です。
来学期のシラバス、授業計画について1月6日、大学理事会から通達を受け取りました。教授の授業は、大学が新たに採用した「人種とジェンダーの議論を規制する政策」に沿って変更しなければならないというのです。
具体的には、教授がシラバスに入れておいた授業内容、プラトンの「饗宴」という議論のなかにある「ディオティマの愛の階段」が問題とされた。これが「ジェンダー論」につながると大学理事会は危惧したらしい。

(Credit: Sergey Sosnovskiy, Openverse)
「プラトンを教えてはならない哲学教授がいる大学って、いったい何なのか」
ピーターソン教授は怒るけれど、理事会は強硬です。従わないならほかの学科に左遷するという。やむなく教授はこの部分を放棄しました。
背景には、2024年9月にA&Mで起きた別の出来事があります。
メリッサ・マコールという講師が授業で「ジェンダー・ユニコーン」を見せたことです。ジェンダー・ユニコーンはジェンダー教育で広く使われる図で、性は多様であること、LGBTQをふくめ、どう捉えればいいかがわかりやすく図示されている。これに対して学生のひとりが発言しました。
「これ教えるの、違法でしょ。大統領は“性は2つしかない”といっているんだから」
この場面を捉えたビデオが出回り、マコール講師は即座に解雇されました。

(Credit; cybertoad、Openverse)
言論の弾圧は進んでいます。
テキサスA&M大学は12のキャンパスに16万人の学生がいる巨大な教育機関ですが、全体が保守的な州法で支配されている。キャンパスのひとつでは教授会が学問の自由、言論の自由を求める声明を出したけれど、理事会に歯向かえば職を失います。多くの良心的な教育者が、消えゆく「学問の自由」の前で進路に迷っている。
日本も、学術会議のリベラルな会員を安倍政権が「拒否」するなど、知への弾圧が進んでいます。そうしたすべての基底には、知をさげすむ21世紀の普遍的な潮流がある気がします。
(2026年1月14日)
