自閉症の「過剰診断」がイギリスで問題になっています。
自閉症は、かつては言葉がしゃべれない最重度の人たちのことだったけれど、いまは高い知能をもち見た目は健康人と変わらない「高機能自閉症」の人まで、じつに多くのタイプがふくまれます。そのすべてが、ひとまとめに自閉症とされる。
これはおかしい、過剰診断だという声と、これこそが実態だという声が対立しています(‘The term is becoming unrecognisable’: have the experts who believed in a single autism spectrum changed their minds? By John Harris. 1 Nov 2026. The Guardian)。

論争のきっかけは自閉症研究者、ウタ・フリース博士のコメントでした。
フリース博士は雑誌のインタビューで、自閉症を自認するBBCの司会者、クリス・パッカムさんは「私がみるところ、自閉症ではない」といっている。
「あんなふうに明快なコミュニケーションのできる人が、自閉症であるはずがない」
自閉症だというテレビ司会者。そうではないという専門家。ふつうだったらここで「どっちがほんとか」となる。けれど自閉症の場合、そうはならない。
真の問題は、自閉症の「診断基準」だからです。
1970年代までの自閉症は、重度自閉症のことでした。やがてそのなかに高度な知能をもつ子がたくさんいるとわかり、まとめて「アスペルガー症候群」と呼ばれるようになった。2013年にはアスペルガーも廃止され、自閉的とされるすべての人が「自閉症スペクトラム」のもとにまとめられました。
診断基準が大きく変わり、広がったのです。

そのため、イギリスでは1998年から2018年までの20年間に、自閉症の診断は約8倍も増えました。
過剰診断だと、フリース博士はいいます。けれど新しく自閉症スペクトラムとされた人たちは、かならずしもそう思わない。自閉症の診断で救われたという人がたくさんいます。自分のかかえる社会生活の困難や疲労、不安の原因がやっとわかったといい、自分についた診断を手放そうとはしません。
アメリカでは、自閉症を重度とそうでないものに二分すべきだという議論が起きていると、以前このブログで書きました(2025年10月6日)。イギリスでも自閉症を単一の概念でまとめるのではなく、いくつかに分類すべきだという議論があります。けれどどう分けるかについて合意はできていない。
どう分けるにしても、重度自閉症、いわゆる古典的な自閉症を周辺に追いやることになってはいけないと思います。
(2026年11月4日)
