補足あれこれ

 ぼくは精神障害の当事者と30年近いつきあいがあります。といっても、ほとんどは北海道浦河町の精神障害者なので、精神障害について一般的な理解が深いとはいえません。
 いまも年に数度、浦河ひがし町診療所を訪れるので、ここにその記録などを書くことがあります。

 日本の精神医療は依然として隔離収容が中心で、人間性を踏みにじる劣悪なしくみがなくなっていません。浦河の精神科はそうした主流からははるかにはずれた少数派です。精神障害者が存在することの意味を問いつづけているという意味では、もっとも先進の精神科だろうとぼくは見ています。

 精神医療の公的な指針として、頼りになるのはWHOだと捉えています。WHOのガイドラインは薬物中心の精神医療に批判的で、地域や社会の対応を促進するなど、先進的で納得できる内容ですから。
 一方アメリカの精神医療は、大部分がビッグ・ファーマ(巨大製薬企業)に支配され、危険で荒廃しているのではないかと危惧します。そうした潮流に抗する良心的な医師や活動家も、一部とはいえいるので、彼らの活動に注目しています。
 ニューヨーク・タイムズには精神医療の専門記者が複数いて、良質な記事を書きつづけています。彼女らの記事を、このブログに反映するようにしています。

 最近ぼくは、イギリスでもイタリアでもフィンランドでもなく、フランスに根を張る制度的精神療法に引きつけられ、本などを読むようになりました。制度的精神療法はフランスでも少数派ですが、日本の少数派である浦河の精神療法ととても相性がいいと感じています。

 精神障害はもっとも興味あるテーマなので、もっとこれについて書きたいのですが、なかなかそうもいきません。その他のテーマについて、ニューヨーク・タイムズの記事などを読んで書くことが多くなりました。
 とはいえ、書いているのは記事の紹介というより、ぼくが読んだ感想や反応などがいりまじっています。出典は明示しますが、どこまでがタイムズの記述でどこからがぼくのコメントかは明確に区別していません。この傾向は、学術論文ではないのでご了解ください。

 ぼくは2020年にコロナ禍が起きたときに、ニューヨーク・タイムズの有料購読をはじめました。その2年後にはウクライナでの戦争がはじまっています。この2つの世界的な大変動をタイムズを通して見ることで、日本のメディアとは別の見通しを持てたのではないかと思っています。いまは気候危機とAIが、コロナ以上の変動をもたらしているでのはないでしょうか。

キタキツネ(北海道浦河町のJR廃線踏切で、2022年)

 ワシントン・ポストも購読していましたが、2025年初頭に購読を打ち切りました。同紙が、社主であるジェフ・ベゾス氏を批判する政治漫画を掲載しなかったからです。政治権力への妥協と感じました。
 ニューヨーク・タイムズは、依然として信頼できる独立メディアだろうと受けとめています。もちろんタイムズにも問題はあるでしょうが、問題のないメディアなど存在しません。問題をつねに議論することで、タイムズは独立メディアとして生き残るだろうと期待しています。

 ぼくはかつてテレビ報道記者でしたが、かなり前からテレビは見ていません。ニュースはネットで、それも有料購読サイトで見ることにしています。無料サイトはどうしても信頼度が落ちるので。

 ということで、日本の大多数の方からすればここはかなり偏ったサイトです。

(2025年5月7日)