世界中でスズメバチ戦争が起きている。
スズメバチがミツバチを襲い、群れを丸ごと殺すので養蜂家は甚大な被害です。
アメリカやイギリスでも、これまでいなかったスズメバチが目撃されるようになり、官民総力のスズメバチ根絶作戦がはじまっています(Post-it notes and tiny trackers: behind the race to stop Asian hornets thriving in the UK. Thu 28 Aug 2025. The Guardian)
スズメバチのなかでも最大で獰猛なオオスズメバチは、群れでミツバチの巣を襲い、数時間でミツバチ数万匹を殺害、幼虫と蜂蜜を奪うといわれます。
東南アジア原産で、ヨーロッパには2004年、中国の貨物船から広がったとされる。フランスにはいま推定50万のスズメバチの巣があり、もう手の打ちようがありません。でも海を挟んだイギリスはまだ侵入されていない。水際での防止作戦がつづいています。

防止作戦の中心は、イギリス政府のAPHA(動植物保全協会)という組織です。
スマホのアプリで市民から目撃情報を集め、専門の捕獲員が現場に急行する。1匹でもいいからスズメバチを捕まえたら、超小型発信機をつけて放すと、飛んでいった先の巣がわかる。これまで巣の発見には数日かかっていたのが、新兵器で1時間以内にわかるようになりました。見つけた巣は高所作業車などで駆除する。こうして駆除した巣はことしすでに64個、APHAのトレーシー・ウィルソン部長はいいます。
「市民の目撃情報が増えているから、もうスズメバチは根絶できないと思うかもしれない。でもイギリスにはまだ定着していない。われわれは根絶作戦をつづける」

アメリカは一歩先を進んでいます。
太平洋岸のワシントン州では、2019年、アジアからやってきた最初のスズメバチが目撃されました。以来5年、市民が目撃情報を伝え、州政府が巣を発見、駆除する作業をくり返しています。2024年には目撃情報がなくなり、州政府はスズメバチ撲滅を宣言しました(NYT, 24Dec.2024)。
初期段階でみんなが力を合わせれば、スズメバチは撲滅できるということです。
日本はもう広がりすぎて、撲滅なんてとてもできません。
スズメバチに関心をもつようになったのは、先日たまたま養蜂家と話すことがあったからです。スズメバチがどれほど恐ろしいか、スズメバチを目撃した養蜂家がどんなパニックに陥るか、さまざまな対策と危険。また、これもたまたまですが、ウクライナの作家アンドレイ・クルコフさんの『灰色のミツバチ』を読んだからでもある。ミツバチって、知れば知るほど奥が深い。昆虫というより、ミツバチの群れは知的生命体です。その生命体を破壊するスズメバチは悪の権化ではないか。
悪だとか善だとか、ムシを人間の価値観で見てはいけないのだけれど。
(2025年9月1日)