デジタルの恩恵

 スマホやネットは青少年の精神に有害かもしれないが、年寄りの脳にはいい刺激になっているのではないか。こんな研究が報告されました。パソコンやネットをよく使うぼくには朗報です(How Older People Are Reaping Brain Benefits From New Tech. Aug. 9, 2025. The New York Times)。

 ベイラー大学の認知神経学者、マイケル・スカリン博士らが、ネイチャー・ヒューマン・ビヘイビアという学術誌に発表しました。
 博士らは、高齢者の認知機能とデジタル技術の関連について、これまでに報告された57件の研究をメタ解析と呼ばれる方法で分析しています。そのうち90%の研究で、デジタル技術は高齢者の認知機能の維持に貢献していることがわかるといいます。
 メタ解析の対象は41万人、平均年齢は69歳というから、パソコンやインターネットを使うようになった最初の世代が、その後どうなっているかを調べた研究でもある。スカリン博士はいいます。
「デジタルを最初に使いはじめた世代が、高齢になってもデジタルを使いつづけていると、認知障害や認知症の発症が少なくなっている」

 デジタル装置は急激に進化し、追いつくのがむずかしい。高齢者はいらいらしたりパニックを起こしたりしながら、すでになじんだデジタル技術をもとに、学習し追いつくことがある程度はできる。そうすることで認知機能は鍛えられる。
 デジタルはまた、社会的なつながりを維持するという指摘もあります。ネットやSNSにつながることが、高齢者の孤立を防ぎ、認知症の発症を遅らせているかもしれない。

 認知症は加齢とともに増加しますが、アメリカやヨーロッパでは近年、その増加率の低下が話題です。喫煙の低下や教育、保健医療の向上などとともに、デジタルを使うようになったことが原因のひとつかもしれない。

 とはいえ、反論もあります。
 デジタルで認知能力が維持されるのではなく、デジタルを使う人はもともと社会経済的に恵まれているので認知症になりにくいのではないか。デジタルと認知能力は、「因果関係」ではなく「相関関係」にすぎないかもしれない。
 スカリン博士らはしかし、健康や社会経済的な環境を考慮に入れても、デジタルはやはり高齢者の認知能力に貢献するといいます。
 そうであることを願いましょう。ぼくは毎日パソコンを使うからデジタルにのめりこむときもあるけれど、だいたいは時間がたてばあきてしまう。執着心のなさは年のせいとあきらめつつ、若者のようにはならない、なれないと安心もしています。
(2025年8月25日)