人間は過・過剰になる

 2年後、世界は変わりはじめる。
 こんな予測を、AI、人工知能の専門家がまとめています。
 AIは急激に進化し、まもなくAGI(汎用人工知能)になる。そして2027年末までにASI(スーパー人工知能)になり、ASIは自立した思考を進め、人類を支配下におくようになるだろう。備えよ、人間。
 そんな話、バカらしいと笑っていられなくなりました。でもどうすればいいか。わからないけれど考えます。人間はますます「過剰な存在」になるのではないかと(This A.I. Forecast Predicts Storms Ahead. April 3, 2025. The New York Times)。

「AI2027」という近未来の予測を出したのは、オープンAI社に去年まで在籍していたダニエル・ココタイロさんらのグループです。いまのAIに疑念を抱き、このままではいけないと非営利団体AIFP(AI未来計画)を設立し、今回のレポートをまとめました。AI内部からの警告でしょう。

 報告書のポイントは、AIが自分で自分を作るようになることです。
 すでにあるAIも、コンピュータ・プログラムを書くという特定の能力では人間をはるかにしのいでいる。これが2027年末までに、人間の指示なしに自分自身の改良版を作るようになる。スーパー人工知能、自立した人工頭脳の登場です。
 自立した人工頭脳は、やがて規制しようとする人間をだまし、支配するようになるというのが報告書の警告です。

 そんなのおとぎ話と、ふり向かない人もたくさんいる。
 警告が正しいかどうかはわからない。けれど2027年が来ないという人はいない。
 だとするなら、スーパー人工知能に対する最低限の規制は考えてほしい。ニューヨーク・タイムズのトーマス・フリードマンさんは4月3日付のコラムで、アメリカと中国は貿易戦争なんかしてる場合じゃない、すぐにでもAI規制の対話をはじめてほしいといっていました。
 そんな対話は望むべくもない。ひとえにトランプ政権の愚鈍のせいで。

 どう規制されるかはともかく、2027年に備えなければならない。
 ぼくはどちらかというと悲観的です。ASIの登場で、先進国の多数派の人びとはますます暇で「過剰な存在」になる。利便と快楽をもたらす過剰な資本主義のもとで、時間と暇を持てあます過剰な存在になる。状況に「反応」するだけで「考える」ことをしなくなり、ポピュリズムも全体主義も広がる一方になるのではないか。
 そういう流れに多少は合わせるしかないけれど、従いたくはない。
 むしろ積極的に少数派でいたい。どこまでできるかはともかく。
(2025年4月9日)