国際極右運動

 なるほど、そういうことか。
 トランプはなぜプーチンにすり寄るのか、なぜアメリカの保守は親ロシア路線に変身したかがわかりました。
 かつて悪の帝国とされたソ連、ロシアは、今日アメリカ極右から見れば伝統文化の聖地で、プーチンはその守護者です。こうした見方は、1990年代の共和党大統領候補、パット・ブキャナンがはじめたといわれ、一気にわかった気になりました(How the G.O.P. Fell in Love With Putin’s Russia. By Jonathan Mahler. April 12, 2025. The New York Times)。

 ニューヨーク・タイムズ・マガジンのジョナサン・マーラー記者が書いています。
 それによればプーチン大統領は2012年、大統領に再選されてから西側の“退廃”と“伝統的価値の破壊”に対する戦いをはじめました。LGBTQの弾圧など、西欧化に不満をつのらせる国内保守派の支持を広げています。
 これにアメリカの極右が注目した。そのひとり、パット・ブキャナンは2013年に出した『超大国の自殺』という本で、プーチン大統領をこういっています。
「人類の将来をかけた文化戦争で、彼はわれわれの仲間ではないのか」
 出生数の減少、キリスト教の衰退、移民の増大でアメリカ社会は危機を迎えているというブキャナンにとって、ロシアは見習うべき先達、文化戦争のリーダーでした。

 ブキャナンは保守主流ではなかった。けれどトランプ政権1期目には、共鳴する主張が共和党内に浸透しはじめています。孤立主義、伝統主義、愛国主義が強まり、強い指導者が専制的な力で他国を従わせる体制を求める人びとが、アメリカ共和党内に親ロシア路線を形成するようになった。
 亡命したロシアのジャーナリスト、ミハイル・ジガールはプーチンをこう書いています。
「彼は要するに、かつての国際共産主義運動とおなじような運動を、いま国際極右運動として進めている」

 旧来の思考にとらわれているぼくは、米ロを敵同士と見てしまうけれど、保守派はそうではない。彼らにとっては「伝統」と「近代」の闘争こそが主戦場です。この文化戦争で、ロシアは敵というよりは味方、だからトランプ政権はロシアに傾斜する。

 パット・ブキャナンをかつて取材した経験から、ぼくは極右には彼のような人なつこさがあることを皮膚感覚で知っています。けれど人なつこさは、自分たちとおなじでないもの、自分たちに従わないものへの排除と抑圧が一体となっていることもわかります。
 国際極右運動に対して、ぼくらはどのように国際リベラル、多様性と寛容の運動を起こすことができるのでしょうか。
(2025年4月18日)