ついに「トランプ2.0」がはじまりました。
リベラルの諸子は乱暴な時代の到来にため息をつき、この嵐をともに切り抜けようと連帯を呼びかけている。当分は何をいってもむなしい。そのなかでしばしば聞くようになったのは「オリガーキー」ということばです。
寡頭政治。小数による独裁。
トランプ大統領本人のまわりに、イーロン・マスク氏をはじめとする大富豪が結集している、これを独裁というより小数の専制的な支配体制、オリガーキーと見る。トランプ独裁とばかり見ていたぼくには新鮮な視点でした(Trump and Musk have launched a new class war. In the UK, we must prepare to defend ourselves. By George Monbiot. 19 Jan 2025. The Gurardian)。
いまやオリガーキーと庶民のあいだで新たな階級闘争が起きていると、英紙ガーディアンのコラムニスト、ジョージ・モンビオットさんはいいます。
階級闘争は労働者が資本に対してし行うものだけれど、いまアメリカで起きているのは逆で、資本、大富豪が労働者に戦いを挑んでいる。
連邦政府の支出を劇的に減らす、という戦いです。それがなぜ労働者への挑戦なのか。
政府、国の権限をできるだけ小さくし、市民の力を最大限大きくするのがほんらいの保守、共和党の理念です。だからトランプ大統領も、側近となったマスク氏らの大富豪も、政府支出に大なたを振るうという。社会保障や福祉が後退し、庶民の暮らしは破壊されても、それはこんな国を作った民主党のせいで、そんなものは一度全部こわし、偉大なアメリカを復活させるのだと鼻息が荒い。
けれど、彼らがしたいのは支出の削減ではない、減税だとガーディアンはいいます。億万長者、兆万長者たちはトランプ政治に取り入り、大減税を実現してみずからの富をさらに増やそうとしている。これが新たな階級闘争なのだと、モンビオットさんはいいます。
階級闘争かどうかはともかく、オリガーキーというとらえ方には説得力がある(ロシアの場合はオリガルヒ、富豪本人をさすけれど本質はおなじでしょう)。
トランプ政権にすりよったのは、世界一の富豪マスク氏だけでない。アメリカで2番目の富豪でアマゾン創業者ジェフ・ベゾス氏、3番目でフェイスブックのマーク・ザッカーバーグ氏らも結集している。アメリカの富豪トップ12人は2020年以来、自分たちの資産を193%も増加させた。貧富の差、格差は広がるばかりです。はてしもなく。
極端な貧富の差は、もう経済の問題ではない。政治制度そのものになろうとしている。オリガーキーということばはそんな事態をぼくらに伝えています。
(2025年1月22日)