西欧で抹茶がブームです。
カフェのメニューで抹茶は急成長、コーヒーより抹茶の売上げが多いところも出てきた。品薄でニセモノが出回り、バニラ風味や黒い抹茶なんてものまであるそうです(Shortages, Smoothies and Fraud: The Matcha Market Cracks Under Pressure. Oct. 14, 2025. The New York Times)。
20年にわたりニューヨークで茶を売ってきたセバスチャン・ベックウィズさんは、抹茶ブームにはあらゆる業者が乱入しているといいます。
「無名や新入りがどんどん入りこんで、まるで西部開拓時代だ」
過去3年で、アメリカの抹茶販売は86%ふえた。小売店は抹茶の入荷があってもすぐ売り切れる。日本で30g500円の抹茶が10倍にもなるらしい。スターバックスは去年より抹茶の購入量を4割増やし、中国や韓国からも仕入れている。

抹茶は日本産のはずなのに、オーストラリアやケニヤ産もあります。安い茶を粉にしただけの粗悪品や、色が白や黒の抹茶まで出てきた。
抹茶は春先の茶葉を数週間、覆いをかけ日にあてずに育てる。一番摘みのやわらかい茶葉だけを蒸し、石臼で挽いて作る手間のかかる製品です。
その抹茶を、海外の業者が日本から大量に買いつけている。アマゾンやフェイスブックを使い、法外な値段で転売しているらしい。
抹茶には法的な規制がなく、何をもって抹茶というかは自由です。だからニセモノが横行し、「シャネルのマッチャ」まであるとか。

ブームに乗って、ニューヨークには抹茶ドリンクや抹茶アイスがあふれています。
「マッチャ・ラテ」にはじまり、「ティラミス・マッチャ」や「バニラ・マッチャ・フォグ」(フォグは牛乳の泡を乗せたもの)、「ほうれん草強化メガ・マッチャ・スムージー」など。いったいどんな味でしょうか。
専門店も現れました。ドリンク専門の「マッチャ・ハウス」はチョコレート抹茶を出し、抹茶アイスクリームが売りの「アオコ・マッチャ」もあれば、ココナツ風味冷抹茶の店「ソラテ」もある。
今月ブルックリンにオープンする「ケトル・マッチャ」は、抹茶を「ワインのような芸術品としてそれらしく出す」といっている。かなりのスノッブでしょう。
抹茶は一時的なブームか、それともスシのように世界の日常になるのか。
一方には「なんとかファースト」なんて偏狭な言い方もあるけれど、食の世界のグローバリズムと多様性は止めようがありません。
(2025年10月20日)