AIに宗教を「取りこもう」という動きがつづいている。
そんなことを考えるなんて、冗談なのか、それとも狂っているのか。
それとも、AIは人間存在の根源に迫っているのでしょうか(Religious Scholars Met With Anthropic. What They Heard Stunned Them. By Elizabeth Dias, Sept. 29, 2026. The New York Times)。
宗教と取り組んでいるのは、最先端企業アンソロピック社です。その動きはすでにこのブログでも、「キリスト教聖職者に助言を求めた」と書きました(2026年6月1日)。
今回あきらかになったのは、アンソロピックがもっと積極的に「宗教の探索」をしてきたことです。1年以上にわたり、カトリック、プロテスタント、ユダヤ教、シーク教、ウブントゥといった宗教・思想界の学者と議論している。

議論を主導したのは、アンソロピック創設者7人のうちのひとり、クリストファー・オラー氏(34歳)です。
テーマは、「もし機械が意識を持ったら、人類にとってどういう存在になるか」、「AIに人間の徳や良心を組みこむことはできるか」でした。
議論を進める過程でオラー氏は、AI企業でただひとりバチカンに招かれ、ローマ教皇レオ14世にも会っています。
1年の協議の結果はどうなったか?
AIに「徳」をつませる具体的な方法は、まだ見つかっていない。
それはそうでしょう。けれど、じゃあ失敗だったのかというと、そうでもない。一連の議論は参加者に多くの洞察をもたらしたからです。

ぼくの見方はこうです。
アンソロピックと宗教者のあいだには、巨大な溝がある。アンソロピックは、最新AIモデルがほとんど「人格」を持っているかのように語る。けれどローマ教皇をはじめ多くの宗教人は、機械が「意識」を持つことはないと断じる。
この「巨大な溝」が、AIの急速な進歩とともに狭まっている。一部はすでに埋まっているのかもしれない。AIが宗教に問うのではなく、宗教がAIに問われているのではないか。
アンソロピックの宗教対話はすべて「クローズド」で行われました。参加者は、議論を外部にもらさない「守秘義務」に署名している。けれどアンソロピックはニューヨーク・タイムズに報道を認め、その時点で守秘義務を解除しました。
どんな議論が行われたのか、いずれもっと明らかになるでしょう。楽しみです。
(2026年10月2日)
