蓄電池の夢

 いよいよ蓄電池が現実の生活を支えています。
 太陽光や風力の利用はどんどん進んでいるけれど、こうした持続可能なエネルギーは大規模な蓄電設備があってはじめて実現できる。その大規模な蓄電設備がすでにカリフォルニア州で電力のピーク需要を支えています。
 カリフォルニアが着々とエネルギー革命を実現しようとしているのに、どうして日本ではできないのでしょうか(Giant Batteries Are Transforming the Way the U.S. Uses Electricity. May 7, 2024. The New York Times)。

 カリフォルニア州は、太陽光発電でアメリカのトップランナーです。発電だけでなく、2020年からはこの電気を有効に使うための大規模な蓄電設備を建設してきました。すでに中国を除けば世界最大の蓄電設備を持っています(この分野では中国の方が先を行っているらしい。中国のあとにカリフォルニアがつづき、はるか後方に日本がいることになります)。
 この蓄電装置が動きはじめている。

 ことし4月28日、電力需要がピークに達する午後7時から10時に、カリフォルニアが使う全電力の5分の1以上を蓄電装置が供給しました。最高7ギガワット、平均的な原発7基分の電力です。電気事業の調査会社、ブルームバーグNEFのヘレン・コー代表は、カリフォルニアがしていることは未来の電力供給の姿だといいます。
「蓄電池は、いまや再生可能エネルギーの必需品だ」
 太陽光や風力などの電力は、自然条件に左右されるからそのままでは使いにくい。電気を貯蔵し、必要に応じて供給する蓄電設備があってはじめて有効に利用できます。そのための蓄電設備をカリフォルニア州は2030年までにいまの3倍にする計画です。代替可能エネルギーの発電を進め、2045年までに電力の100%を炭酸ガスを出さずに供給するといいます。

(Credit: Can Pac Swire, Openverse)

 一方日本はどうか。
 聞き及んでいるかぎりでは太陽光発電は余ったり足りなかったり、全体としてうまくいっていない。原因のひとつは蓄電設備の不足でしょう。なぜ蓄電設備を作らないのか。それはひいていえばぼくらの社会に「代替エネルギーに向かう」という明確な政策がないからです。表面的な政策はあっても、政治的な意志がないとしか思えない。

 やはり壁はゲンパツと電力会社なのだろうか。
 ひとつ思い出すのは、テレビ局にいたころの経験です。電力会社への批判的な報道には気をつけなければならなかった。明確な指示があったわけではないけれど、「これ、ちょっとまずい」と耳打ちされ、ああそうなんだなと思う、そんな経験です。なにしろ電力会社は巨大独占企業、つつけば何が出てくるかわからない。つつくときは慎重に。
 ほんとうに問題なのは電力会社ではなく、その生命線を握る人たちの方なのだけれど。
(2024年5月16日)