キツネが靴を盗む、という事件がつづいています。
ところはアメリカ、ワイオミング州のグランドティトン国立公園。キャンプを楽む観光客の靴が、この1か月で32足も盗まれました。
国立公園事務所は「靴泥棒のキツネ」に注意を呼びかけています(Beware of ‘Swiper,’ a Fox at Grand Teton Park With a Penchant for Footwear. July 17, 2025. The New York Times)。
キツネが人間の靴を盗むなんて、聞いたことがない。でも国立公園事務所は早い段階で、犯人はキツネと断定しました。たぶん単独犯行だけれど、複数犯かもしれない。犯行の手口は、キャンパーがテントの外においた靴を盗んでいくというもの。
6月末、公園事務所は注意を呼びかけるポスターを貼り、被害が32件に達した7月にはビデオをインスタグラムに投稿しました。

https://www.instagram.com/p/DL8ILC-T_Qj
ビデオは、ぬいぐるみのキツネの前にたくさんの靴を並べ、被害にあわないよう呼びかけています。ユーモアあふれるビデオだけれど、こめられたメッセージは真剣だと公園事務所の広報担当、エミリー・デービスさんはいいます。
「野生動物に餌をやらないこと。それは動物と人間、双方の安全のためです」

餌? キツネにとって、靴は餌なのか。
自然保護団体のクリスティン・コームスさんは、キツネはイヌとおなじように人間の靴に興味を示すといいます。
「もしかして犯人のキツネは、以前人間の近くでエサをみつけたことがあり、その記憶と靴が結びついているのかもしれない」
靴は嗅覚を刺激する。汗の臭いがして、塩気もある。とくに左足の臭いが強いので、キツネは左の靴を盗んでいく。
靴に尿をかけ、マーキングで縄張りを主張するのかもしれない。
犯行の動機は不明だけれど、これ以上盗難が起きないようにしなければならないと公園事務所のデービスさんはいいます。靴を盗むのは、それほどキツネが人間に近づいているわけだけれど、キツネから見れば人間が生活圏に入ってきたということでもある。キツネはふつう、人間に危害を加えないけれど、たとえば餌をやろうとしたときなど、偶発的な噛みつき事件が起きるかもしれない。
「人間になれすぎたキツネは、場合によっては駆除しなければならないこともあります」
キツネはあくまでも野生動物、ペットにすることはできません。キツネ自身の安全のためにも、靴泥棒はやめてもらいましょう。
(2025年7月21日)