11回目の稲刈り

 浦河ひがし町診療所のいつもの稲刈りが、13日土曜日に行われました。
 夕方から雨の予報もあったけれど、降られることもなく無事に収穫を終えています。

 9時過ぎから三々五々はじまった作業は、10時ごろいったん手を止め、全員で記念写真撮影、そのあと型通りに「ドンパン節」を奉納しました。といってもドンパン節を踊れる人があまりいなかったので、たった4人の簡素版。どちらかというと撮影に来たNHKへのサービスだったかもしれません。

ドンパン節奉納

 これまで来ていた幼稚園児は、ことしはタイミングが合わずに不参加。かわりに「からしだね」という発達障害支援グループの子どもや若者十数人が参加しています。診療所のメンバー、スタッフ30人くらいをふくめ、総勢100人くらいでした。実際に稲刈りの作業をしたのはその半分くらい、残りの半分のさらに半分が、刈った稲を束ねるなど、田んぼに入る必要のない高齢者向けの作業です。
 西は新ひだか町静内から東はえりも町まで、ひがし町診療所の日常活動にかかわるあれこれの顔ぶれが見られました。

 好きな人が好きなときに好きなように働く、それとも働かないで口だけ出す、いや口も出さずじっとしている人もいる、いかにも診療所のイベントらしいばらばら感があふれています。ことしメンバーには仕出しのおにぎりがありましたが、ほかの参加者は各自弁当持参でした。昼前からは恒例のたこ焼きボランティアが活躍、醤油と小麦粉の焼ける香ばしい匂いが田んぼの上に漂っています。

 11年目の収穫は去年とおなじか、少し少なかったかもしれません。はさがけの“はさ”が柱1本分あまりました。でもこの少なさが診療所の作るコメ、「幻米」のいのちです。一般農家の作る田んぼのように収量を上げないから、稲がゆったりたっぷり育つ。その余裕が、商業ベースのコメではえられない段違いの味わいを生みだします。
 意図してそうなったのではない。診療所の自然体の成り行きです。うまいコメを作ろうと意図していたら、田んぼの平和は失われていたでしょう。

 収穫がほぼ終わった午後2時すぎ、精神科医の川村敏明先生ら何人かが落穂拾いをしていました。年寄りはこういう地味な役割がいいんだといいながら。
 ふと、診療所も先生も一段枯れたなと感じます。
 ちょうど、夕焼けが夜の闇になる前にひときわ輝くように、かつてのお祭り騒ぎとはちがう落ちつきが田んぼを満たしていました。
 おりしも近くの川では、サケの遡上がはじまっています。
(2025年9月15日)