飛ぶ前に体重測定

 いいね!と思ったけれど、満足半分、ちょっとがっかりのニュースでした。
 航空会社が、乗客の体重測定をはじめたというのです。肥満で手荷物を大量に持ち込む人は高い料金を払い、やせて手荷物の少ない人は安くするっていうことかと思ったら、どうもそうではない。残念ながら(Would you weigh yourself before boarding a plane? This airline is trying it. Feb. 9, 2024. The Washington Post)。

 乗客の体重測定をはじめたのはフィンランド航空です。でも全乗客ではなく、測定に同意した人だけ。それも機内持ち込みの荷物といっしょに測る。だから正確には乗客の体重ではなく、一人あたりの全重量です。
 飛行機の機体や燃料などは、正確に重さがわかる。でも乗客の体重や手荷物の重量はわからず、これまで各航空会社は独自の推定値を使っていました。この推定値を、もっと正確なものにしたい。そのため、一部とはいえ乗客の重量を測定するようです。飛行機を飛ばすにはそこまでこまかいところを見なければならない。そういう時代になったということでしょう。

 だったら全員の体重測定すればいいのに、それはできない。体重は大事なプライバシーなので。だからフィンランド航空の体重測定も「同意した人だけ」を対象に、かつ「匿名厳守」で行う。重さと性別、年齢、エコノミークラスかどうかなどは記録するけれど、名前は記録しない。おまけに実施するのは当面、ヨーロッパ発の一部の便だけです(アメリカでやったら大騒ぎになるからでしょう)。

 これに対する乗客の反応がおもしろい。
 いいんじゃないの、というのが一般的だけれど、肥満者への差別だとか人を馬鹿にしているという怨嗟の声もある。なかでも重大なのは、「どんどんやってくれ、私は他人の分まで料金を払いたくない」という声でしょう。これは、自分は太っていないのに、太った人とおなじ航空料金を払うのは納得できないという意味です。あるいは、なぜ巨大なバッグを機内に持ち込んでも料金が変わらないのか。
 この議論、もっと発展してほしい。

 でもなあ、と、その一方で立ち止まります。
 肥満者の境遇にも配慮しなければいけないかもしれない。なりたくて肥満になっている人ばかりではないから。ぼくの知る精神障害者のなかには、抗精神病薬の副作用で肥満になった人がたくさんいます。そういう人に差額料金を課すのはやはりおかしい。肥満に追加料金をというのは、車椅子に追加料金をというのとおなじになる場合もあります。ここは短絡した見方をしてはいけません。
 でもなあ、という思いは消えないけれど。
(2024年2月13日)