スウェーデンが、乳幼児にテレビを見せるなといっています。
テレビだけでなくスマホもタブレットも。そういうデジタル機器を見る「スクリーンタイム」は、2歳以下の乳幼児でゼロにすべきだと勧告している。なんと大胆な政策、いいなあと思う。でもそんなこと、現実に可能でしょうか(How Much Screen Time Should Toddlers Have? None, Sweden Says. Sep. 5, 2024. New York Times)。
スウェーデン社会保健省が出した勧告は、次のようなものです。
・2歳未満の乳幼児のスクリーンタイムはゼロにする。2歳から5歳までの子は1時間、6歳から12歳は2時間、それ以上の子どもは3時間まで。
・ソーシャルメディアや親に、この年齢と時間の制限を守るよう勧める。
・寝る前やベッドではスクリーンタイムなし(これは親も守るべきだと科学者はいう)。
・親は、自分自身のスクリーンタイムも考え、子どもと一緒にいる時間をつくり守るべきだ。
ヤコブ・フォルセメート社会保健相は、「いまのような子ども時代」を変えたいといいます。テレビやスマホやタブレットを見てじっとしている、そんな子どもたちをなくしたいという意味ですね。
子どもは「スクリーンタイム漬け」になりがちです。泣いたりぐずったりする乳幼児はテレビの子供番組を見せればおとなしくなる。スマホの動画があればレストランで騒ぐこともない。多くの親にとってスクリーンは救いの神、テレビやスマホなしで子育てする親は、先進国では絶滅危惧種でしょう。
とはいえ育児専門家は、乳幼児が歩くことやしゃべること、人とのかかわりをはじめて身につけようとする時期に、スクリーンは助けにならずむしろ有害だと見る。レーゲンスブルク大学のセバスティアン・スガーテ博士はいいます。
「1歳になるまでの乳児は、神経学的に見てたいへんな変化が起きます。そのとき、三次元の世界に代わるものはありません」
二次元のスクリーン画面は、現実の代わりにはならない。必要なのは生身のおとな、それもスマホを見ていないおとなです。
おなじような動きはほかの国でも起きている。
アメリカとアイルランドの専門家は、1歳半までのスクリーンタイムゼロを勧めています。カナダとオーストラリアは2歳、フランスは3歳。ただし国によっては、家族親戚とのビデオチャットは例外にしている。こうした各国の提言が学会レベルであるのに対し、スウェーデンは国としての勧告です。意気ごみのほどがちがう。
先進各国を横目に、日本もいずれそれに習うんじゃないでしょうか。
(2024年9月20日)