AIを悪用する危険が高まっている。
国際的な報告書が警告しています。ネットやSNSにはどんどんフェイクが入りこんでくる。だまされないためには「信頼できる情報源」を確保するしかないでしょう(DeepSeek advances could heighten safety risk, says ‘godfather’ of AI. 29 Jan 2025. The Guardian)。
急速に進化するAI、人工頭脳について、可能性と危険性を網羅的にのべているのは「国際AI安全報告」です。2年前にイギリスのブレッチリー・パークで開かれた「AIサミット」をもとに、EUと国連が作りました。執筆したのは30か国、96人のAI専門家で、いまもっとも信頼できるAIについてのまとめです。
AIのゴッドファーザーといわれるモントリオール大学のヨシュア・ベンジオ教授は、中国が開発した最新AI、ディープシークの登場でAIの安全性はさらにおびやかされているといいます。
「AIの安全性という観点から好ましいことではない。競争が激しくなると、当然ながら安全性の検討がおろそかになるからだ」
ベンジオ教授は、最新のAIで、従来なら博士レベルの専門家でなければできなかった生物化学兵器を、しろうとも作れるようになるといいます。
「専門家がする場合はこまかい作業の積み重ねが必要だが、AIはしろうとでもできるよう、作成のステップをひとつひとつ、対話をとおして具体的に教えてくれる。グーグル検索ではできないことだ」
生物化学兵器の危険だけではなく、AIはコンピュータ・ソフトやシステムの弱点を把握することもできる。ハッカーによる大規模な攻撃の危険も増します。ディープフェイクと呼ばれる偽情報も氾濫するでしょう。「そっくりさん」のニセモノ・インタビューや写真、動画は、これまで以上に巧妙な「なりすまし」になり、見分けがつかなくなる。だまされたことすらわからなくなります。
ぼくらはネット上の情報について、もはや真偽を判定できない。情報の出どころ、情報「源」を見きわめるしかありません。さもなくば、ネットではなく対面にもどるか。
この大事な場面で、トランプ政権はまったく期待できない。安全性どころか、規制反対の大合唱で、AIは金もうけの手段にすぎません。そういうとき、ヨーロッパや国連が安全性を見すえてAI規制に動こうとしているのは、わずかながら救いです。
国際AIサミットは、報告書の公表を受け今月パリで2回目の会合を開きます。AIのゴッドファーザーたちの良識が少しでも広がることを願いましょう。
(2025年2月3日)