むしろ格差を広げる

 前回、格差が広がっていると書きました。
 格差が広がると全体主義も広がるという議論があり、トランプ政治は要するに格差に支えられていると気づきました。全体主義に対抗するには格差を縮めなければならない。それはどうすればいいのだろうか(Rightwing populists will keep winning until we grasp this truth about human nature. By George Monbiot. 13 Apr 2025. The Guardian)。

 格差が全体主義をつくるというのは、ガーディアン紙のコラムニスト、ジョージ・モンビオットさんです。
 彼はバイデン政権のもとでアメリカのGDPは伸びたけれど、インフレを加味すればアメリカ人はむしろ貧乏になっているといいます。

(Credit: Gage Skidmore, Openverse)

「GDPから落ちこぼれた人は、いまある体制をすべて壊したいと思う。トランプのしていることは格差の拡大だが、そうすることで彼は民の怒りをあおっている。悪いのは移民や性的少数者、科学者や教育者、中国だといって」

 格差を広げているからトランプは支持されているというのは、奇妙に説得力ある議論です。
「トランプの支持率は43から48%と変わらない。なぜか? そこには人間性に深く根ざした傾向がある。自分を排除するものを破壊したいという思いだ。それをじつによくわかっているのが極右だ」

 自分を排除するもの、すなわちいまの社会、経済、政治体制、民主主義。
 そうしたものに対する反発、不満、怒り。自分たちは無視されているという思いが、全体主義へのエネルギーになる。
「世界の億万長者は去年、資産を2兆ドルも増やしたが、貧困層の所得は1990年以来ほとんど変わっていない。格差の広がりが、世界的な全体主義の興隆と深くつながっている」
 格差が広がると、デマも増えるという研究もあります。デマとフェイクは全体主義の原動力になる。

 モンビオットさんは、格差を少なくするには金持ちに課税するしかないといいます。
 ところがこれがどの社会でもむずかしい。なぜ格差がいけないか、なぜ金持ちに課税しなければならないか、そんな複雑なことを選挙民は理解しようとはしない。ただいまある体制をこわそうとする。そこに君臨するトランプは、当分安泰かもしれない。
 経済恐慌が起きないかぎり、政権交代はないのだろうか。
 いや恐慌になれば強権政治が進むだけかもしれない。
 うまずたゆまず、人びとと話し合うしかありません。こわす前に考えようと。もしもどこかで、話をする機会があったならば。
(2025年4月16日)