タンパクの理由

 最近、タンパク、タンパクといわれます。
 もっとタンパク質を摂れということでしょう。食物繊維を摂れとか野菜を摂れ、ミネラルを、全粒粉をと、「あれを食べろこれを食べろ」がわずらわしい。タンパクもおなじ扇動かと思ったら、そうでもない。タンパクを食べろという理由がわかって納得しました(Are You Getting Enough Protein? Let’s Find Out. April 25, 2025. The New York Times)。

 要するに高齢化対策です、ぼくにとっては。
 タンパクをたくさん摂れというのは、筋肉を増強して強い体を作るというのではない。高齢者はただでさえ筋力が弱る、筋肉組織がなくなっていくので、少しでもそれを補うために過剰なくらいタンパクを摂っていた方がいいということらしい。年々、筋肉の衰えを実感するぼくには大事な視点です。またタンパクは酵素などを作るのにも必要で、免疫力の維持にもつながるようです。
 強くなるのではない、弱くなるのを少しでも避けるのだといわれると、なるほどと思う。老化とのおだやかな妥協のような気がして。

 ニューヨーク・タイムズのネット上の設問に年齢と体重を入力すると、ぼくが1日に必要なタンパクは「少なくとも44グラム」と答えが出てきます。
 ではそれだけ摂っていればいいかというと、そうでもない。
 71歳以上の高齢者は、女性の半分近く、男性でも4分の1くらいが必要量のタンパクを摂れていない。欠乏を避け、筋肉量の低下を抑え衰弱を防ぐには、推奨値より余分に摂っていた方がいいと老年医学の専門家はいいます。
 すると、ぼくの必要量は44ではなく55グラムになります。

 もしも何らかの理由で食事制限をしているか、入院や手術を終えたばかりのときはさらに多くのタンパクが必要で、66グラムから88グラムになる。
 それだけのタンパクを肉や魚、乳製品、卵や豆類などから摂るように務める。ちなみにスクランブルエッグ1人前のタンパクは13グラム、ベーコン2片で5.5グラム、サーモン一切れ36グラムなどとなっている。大豆でできる豆腐、ひよこ豆でできるフムスなども優秀なタンパク源です。

 日本の厚生労働省によると、65歳以上の男性のタンパク推奨量は1日60グラムです。女性は40グラム。でも、なぜそれだけ推奨されるかが厚労省サイトでは伝わってこない。
「強くなるためではない」という背景がわかれば、じゃあ高齢者も努力してみようかという気になる。これまでよりは多少、意識してタンパクを食べるようになります。
(2025年4月28日)